兵庫松本通教会/全国から献金、年内に復活
震災で全壊した神戸市兵庫区の兵庫松本通教会は今、クリスマスを目指し、再建の真っ最中だ。壊滅的な被害を受けた松本地区。同教会が地域に復活するまで、六年近い月日を要した。
全壊した会堂は、築七十二年の木造二階建てで、二階は牧師の住居だった。親子代々の信者も多く、古くから地域に根づいた建物。震災では併設する幼稚園舎も全壊し、今なお再開の予定はない。
「会堂の再建は無理だと思っていた」と廣瀬満泰牧師(67)。最大の壁は、やはり資金だった。しかし、信者やボランティアらの熱意で計画が進み、震災の翌年の夏に募金を開始。約一億五千万円にのぼる再建費用は、信者や全国からの献金などでめどが立ち、今年四月、ようやく着工した。
震災後もボランティアの基地になるなど、地域のランドマークの役割を果たすが、文化財に指定されているわけではなく、復旧への公的支援はなかった。被災した教会や寺社の多くが、一様に直面した課題だ。
廣瀬牧師は「行政が宗教施設の再建を支援することは、政教分離の原則から難しいのでは。道のりは長かったが、教会の再建は地域の復興との両輪で、教会の完成だけを急ぐべきではない」と、復興の過程を振り返る。
新しい会堂には、地域の交流拠点となる集会所を併設した。公共性をさらに意識した設計となっている。
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旧谷崎邸「鎖瀾閣」/募金1割未満、情勢厳しく
震災で全壊した文豪谷崎潤一郎の旧邸「鎖瀾閣(さらんかく)」=神戸市東灘区岡本=の復元計画は、資金難から厳しい情勢となっている。研究者や地元住民らでつくる復元委員会(小川守正会長)が募金を呼びかけてきたが、必要額の一割にも届かず、目標とする二〇〇〇年中の着工は極めて難しい状況だ。
「岡本の家」として知られる「鎖瀾閣」は、谷崎が自ら設計を考えて建てた唯一の家。二階建てで、玄関が中国風、二階居室が純和風などユニークな造り。一九二八(昭和三)年から約二年半住み、「蓼喰ふ虫」「卍(まんじ)」などを執筆した。
震災後、解体された。文化財指定を受けておらず、公的な補助の対象外。復元委員会では、署名や募金活動を展開。神戸市も岡本梅林公園の一部を無償で貸すことを決めた。しかし、集まっている募金は目標額(九千万円)には遠く、六百三十万円余りにとどまる。
同委員会では、模型の製作や、阪急岡本駅近くにPR看板の設置を検討するなど復元運動の盛り上げに躍起だが、運動の再構築を求める声も出ている。
広岡倭副会長(55)は「復元への灯をともし続けることが、地域からの文化創造につながると信じて取り組みたい」と、協力を呼びかけている。
2000/11/17