阪神・淡路大震災の復興土地区画整理事業と復興市街地再開発事業が都市計画決定され、今月17日で10年が過ぎた。区画整理は、自治体や公団が事業主体の18地区のうち11地区で完了し、全体の仮換地指定率も96%まで進んだが、人口が回復せず、にぎわいづくりが課題となっている地区もある。再開発では、神戸・阪神間の6地区のうち4地区の事業が完了したが、残る2地区を含め、入居店舗が集客に苦労する姿も見られる。数字の背景にある現状を探った。
▼区画整理 人口回復に格差、高齢化も
■北淡町・富島
淡路島の被災地で唯一、復興土地区画整理事業を導入した兵庫県津名郡北淡町の富島地区。今年初めに地区の中心を貫く県道の一部が幅十五メートルに広がり、その後も消防団の器具庫や信用金庫支店などが完成した。
ほぼ仮換地が終わった地区東側では新築された民家が並ぶ。地元の男性は「別荘地のようにきれいになった。過疎と高齢化で、歩いている人はほとんどいないけれど」と複雑な表情を浮かべた。
同町は四月一日に周辺四町と合併して「淡路市」となるため、富島地区の中心にある町役場が「地域総合事務所」に改組される。職員数は六割程度に減るため、近くの飲食店主は「これ以上活気がなくなると困る。地方では役場は貴重な就職先でもあるのに」と心配そうに話す。
■芦屋市
阪神芦屋駅東にある芦屋市の中央地区。事業完了が同市内のほかの二地区より早かった分、人口回復率は高い。まちづくり協議会もすでに解散した。しかし、東半分で新店舗の進出が相次ぎ、商店連盟の結成に向けた動きがある一方、西半分では店舗数が減り、商店会の会長が不在のまま一年が経過するなど、地区内で復興の差が浮き彫りになっている。
同市の西部第一地区では、宅地減などの影響で人口回復率は65%にとどまり、反対に西部第二地区ではマンションの建設が相次ぎ、元の人口をほぼ取り戻した。
■神戸・御菅東
震災で約九割の建物が被害を受けた神戸市長田区の御管東地区。今ではニュータウンのように、幅広い道路が整備され、真新しい住宅が並ぶ。しかし、御管三・四地区復興対策協議会の山本勤会長(72)は「商売人は辛抱比べですわ」とため息をつく。
震災前は市場や小売店が混在する人情あふれるまちだった。事業は二年前に完了したが、人口の回復率は42%にとどまり、住民の高齢化も進む。空き地の中には事業で買収された市有地も目立ち、同協議会は昨年、市に有効利用を促す要望書を提出した。
同協議会は六月に解散する見通し。「自治会を何とか立ち上げ、これまでの取り組みを引き継ぎたい」と山本会長。まちづくりは新しい局面に差し掛かっている。
メモ
土地区画整理事業
事業地区内の土地所有者が一定の土地を出し合い、公共用地や宅地を整備しなおす事業。地区内に占める仮換地された土地の面積の割合が仮換地指定率。100%に達すると換地計画の縦覧を経て清算金を確定させ、事業完了の「換地処分」となる。