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兵庫県立美術館の将来像を語る中原館長。「若い人は美術より音楽に対する関心の方が高いようだ。絵は情報量が多すぎるのかな?」とも=神戸市中央区脇浜海岸通1(撮影・長嶺麻子)
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兵庫県立美術館の将来像を語る中原館長。「若い人は美術より音楽に対する関心の方が高いようだ。絵は情報量が多すぎるのかな?」とも=神戸市中央区脇浜海岸通1(撮影・長嶺麻子)

兵庫県立美術館の将来像を語る中原館長。「若い人は美術より音楽に対する関心の方が高いようだ。絵は情報量が多すぎるのかな?」とも=神戸市中央区脇浜海岸通1(撮影・長嶺麻子)

兵庫県立美術館の将来像を語る中原館長。「若い人は美術より音楽に対する関心の方が高いようだ。絵は情報量が多すぎるのかな?」とも=神戸市中央区脇浜海岸通1(撮影・長嶺麻子)

 兵庫県立美術館(県美)は今、多くの人が訪れたい場所になっているだろうか。文化の復興に向けて、どんなアクションを考えているのか。中原佑介館長に聞いた。(新開真理)

-県美の役割とは。

 「人間がなぜ絵を描くのか知りたくて、(数十万年前に描かれたとされる)フランスなどの洞窟(どうくつ)絵画を見に行った。生活に役立つから描き始めたわけじゃない。絵というものは不思議。人間がなぜ役にも立たないこんなことをやっているか、好奇心を持ってほしい。(美術館などが)いろいろ解説するのはよくない。説明なんてできない。博物館は主に生活に役立った物を展示してあるので『意味』を問われることはないが、美術館は違う。ピカソの言葉だが、絵は物事の答えではない。常に謎を出している。そのおもしろさを伝えることが役割だと思う」

-「文化復興のシンボル」として誕生した経緯がある。

 「地震は日本各地で起きているが、災害復興の象徴として美術館を造ったのは兵庫県だけと聞いた。それだけに充実した館にしないといけない。だが、地震と関係ある企画ばかりをすることが役割ではない。兵庫ゆかりの美術家の紹介も大事。そして、美術全般に対する関心を高めてもらうことが使命だ」

-震災は「街」に対する私たちの考えを揺さぶった。美術という側面から、街づくりにどうかかわりたいか。

 「パリの(国立近代美術館などが入る)ポンビドゥーセンターの周りには画廊が多い。アートを中心にした一つの区画になっている。ここは県美だけがぽつんとあるでしょ。ちょっと寂しいな。画廊とか美術書専門の本屋とか、雰囲気ができるともっといい。『美術館のある空間』をつくっていかないと。神戸の街はデザイン感覚が弱い。兵庫県、関西はデザイン界に多くの人材を輩出している。新しい街をどうつくるか、デザイナーやアーティストがもっと積極的に(活動を)やればいい。震災後、地味になってしまった印象がある」

-兵庫県は本年度を行革元年と位置付け、文化関係の予算も削減された。どう対応する。

 「これは日本、世界の美術館が抱える一番大きな悩み。館長が集まる会議でも話題の中心だ。ユニークな企画をやりたいが、予算が厳しい中、人が全然入らなくてもいいとは言えない。(この問題は)いつも考えざるをえない。近年、美術館に来る人が減り、(県美の場合は)大阪市に国立国際美術館という強敵がある。そこで滋賀県立近代美術館と所蔵品や企画、学芸員の交流協定を結んだ。県立館同士の協定は初めて。いい先例をつくったと思う。今後、同じ問題意識を持つ館とネットワークを広げたい」

-そうした取り組みをどう発信するのか。

 「県美の宣伝はまだ不十分。『うちはうち』ではなく、少し離れているが神戸市立博物館との連携を強化するなどして、美術館のある都市として認識してもらう方向を目指すべきだ。私も、好きじゃなかった同窓会に出て招待券を配るなどしている。観光名所的な存在になると、美術に関心のない人にも来てもらえるのでは、とも思う。安藤忠雄さんの建築であることをPRするとか、いろいろ考えたい」

略歴 なかはら・ゆうすけ 1931年神戸市生まれ。神戸一中(現県立神戸高)から京大に進み物理学を学んだ。ベネチアビエンナーレなどの国際展コミッショナー、京都精華大学長などを経て2006年から現職。09年1月に日本美術評論家連盟会長に就任。近著に「ヒトはなぜ絵を描くのか」など。横浜市在住。

2009/1/20
 

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