■惨禍、記憶に刻み込み
「僕は青春をなくした」。今年2月、100歳になった永田光司さんが戦争を語る時、そんな言葉がこぼれる。陸軍の兵士として20歳からの5年間をささげた。その後、サラリーマンとして35年間勤め上げ、60歳で始めたマラソンは40年になる。人生の4分の3を「戦後」が占めるようになった。それでもなお、あの5年間は自負と後悔を含み、体に刻まれている。(喜田美咲)
◇ ◇
教師の父を持ち、長男として有馬郡三田町(現兵庫県三田市三田町)に生まれた。旧制三田中学(現三田学園)を卒業後、東京の高等商業学校に進学。1941(昭和16)年12月8日、開戦は20歳の冬のことだった。卒業試験の最中、ノートを窓から放り出し、奮い立ったのを覚えている。
翌42年2月、召集を受けて姫路の連隊に入った。中国河北省保定に移り、士官養成学校で半年ほど陣頭指揮を学んだ。見習い士官となり、北京と漢口(現武漢)を結ぶ京漢鉄道沿線の警備に当たった。
保定から南西に進む軍の第一線を歩いた。100メートルもすれば敵地という場所で塹壕(ざんごう)を掘り、目を凝らした。
登山や陸上競技で足を鍛えていたことから、5千人以上を先導する「先兵」を任された。1日40キロは当たり前。「歩き回らされて、撃たないうちに死ぬんちゃうかと思った」。山の向こうを攻撃するために歩いていると、頂上で警戒中の中国兵に出くわした。「天気はいいし、ヒバリは鳴くし、互いにぼーっとしてた」。はっとわれに返り、慌てて茂みに隠れたこともあった。
少尉に昇任したのち、永田さんを含む4、5人がスパイに選ばれ、敵地の中国人集落を偵察した。中国軍も参加する祭りの日だった。綿の入った丈の長い中国服をまとい、丸い帽子をかぶる。カメラと拳銃を忍ばせ、日本軍が雇った中国人通訳とちょうちんの輪に入った。
屋台で踊る中国軍幹部の顔を確認する。にぎわいの中でささっと動く足音に耳をそばだてる。「明後日ぐらいに前進してきそうだな」。空気を読み取る。持ち帰った情報は他の人の報告とすり合わせ、確度を探る。誰が誰に雇われているか分からない。通訳も信じてはいけなかった。
懐柔もした。通信手段の電話線を切られないよう、農民が攻撃してこないよう、地元の村長に頼み、子どもらに食事や菓子を食べさせた。それでも切られる時はある。農民が畑のあぜに仕掛けた地雷で、目の前の兵士が吹き飛んだこともあった。責任を問うため、仲間の兵士が村長を拷問していた。隣のトーチカ(守備陣地)では、炊事で雇っていた中国人が発砲し、仲間が皆殺しにされた。
「口に出して言えんようなこと。これが戦争だったんだわ」。今聞くと「そんなでたらめ」と思われるかもしれない。生きるか死ぬかはお互いさま。そう言い聞かせ、止めることはできなかった。
戦況の大局は一切聞こえてこなかった。44年、米軍の爆撃機B29が漢口の上空で爆弾を降らせても、日本軍の飛行機は飛ばない。高射砲も当たらない。「激戦地に兵力を投入しているからここは人手不足なんだろう」ぐらいに思っていた。
45年8月15日、終戦を知った。上っ面では、「中国では負けていない。まだやらないかん」と言った。それでも肩の力は抜けた。やっと帰れるんだと。
戦争を主導した軍上層部は、始めてしまった戦いを途中でやめられなかったのだろう。彼らに自分たちのような一兵士の声は届かない。当時はそうだった。
□ □
「兵隊で5年、社会人35年。走って40年や」。100歳のマラソンランナーとして取材した際、永田さんはそう戦争を振り返った。時間にすると20分の1だが、その5年がのちの人生を形づくったという。軍服に袖を通した日から何を見て、何を考えて生きてきたのか。平成生まれの記者が聞いた。

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