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卒業製作で手掛けたお気に入りの一足=三田市福島
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卒業製作で手掛けたお気に入りの一足=三田市福島
「ミシンを黙々とかけている時間が好き」だという=三田市福島
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「ミシンを黙々とかけている時間が好き」だという=三田市福島

 入学前から予感はあった。コロナ禍で遅れて始まった学校生活は、最後まで制限が付きまとった。神戸医療福祉専門学校(兵庫県三田市福島)整形靴科2年の園崎真由(20)もその1人。思いも寄らない壁に向き合い、製作に取り組んだ。このほど卒業し、4月から医療靴を作る会社で働く。

 「側面の金具がポイントです」。ブーツを紹介する声が弾む。卒業製作で作った自分サイズの逸品。ミシンのペダルを踏むと、まなざしに力がこもる。「没頭できる時間が好き」。大好きなミシンを使う仕事に就きたくて、同校を選んだ。

 多可町出身。西脇高校生活情報科で服飾を学んだ。幼い頃、足の指が内側に向く「内転足」で整形靴を履いていた。かつての自分のように足に悩みを抱える人の力になりたいと思い、専門学校を選んだ。

 2020年4月、三田の寮で1人暮らしを始めたが、すぐに最初の緊急事態宣言が出た。実家に戻って母の縫製の仕事を手伝った。2カ月間、需要が高まっていたマスクを作り続けた。

 6月、ようやく対面授業がスタート。骨の構造を学ぶ座学に製靴工程の実技、覚えることは山のようにあった。週末はノートをまとめて復習する時間に充てた。「外出は怖かった。時間ができたら友達と電話するか、勉強するか」。校内には疾患を抱える人も出入りするため、行動には慎重を重ねた。

 「高校は授業と実習で忙しかった。進学後は遊ぶことも楽しみにしてたんですけど」。大学に進んだ高校の級友は「ずっとオンラインで友達ができない」と言っていたから、通えるだけありがたいとさえ思った。

 2年生になると、整形靴科の学生は関心ある企業で1カ月ほど「学外実習」を受ける。進路を決める人も多い大事な実習だ。しかしアルファ株が猛威を振るい、3度目の緊急事態宣言が発令されていた。訪問を予定していた企業から中止の連絡があった。「もうどうしよって、何も分からなくなった。靴関係の職を目指すのもやめようかなって」。でもやっぱり、作りたかった。

 こだわったのは、設計だけでなくミシンも自分で扱える会社。実習に行けた人や社会人経験のある級友からアドバイスを受け、就職先を一から探した。ちょうど関心のあった医療靴の会社から求人が出たため、希望がかなった。

 疾患のあるモデルを招いた靴の型づくりも行ったが、脳性まひなど疾患が重度な人はコロナに感染すると命に関わることもあるため呼べなかった。働き出すと困ることはきっと出てくる。でもこれまでのように立ち止まり、その都度教えてもらおうと思う。「学びに学んだ2年間でした。コロナだったからより一層」

 世の中には、整形靴しか履けない人がいる。意外と存在を知らない当事者もいる。多くの利用者の悩みに寄り添う靴を作っていきたい。「でも最初の目標は、社会人生活についていくことです」

=文中敬称略=

(喜田美咲)

    ◇

 コロナ禍は学生の日常を一変させた。授業はオンラインとなり、実習も中止に。悩み、工夫し、喜び合った日々を終え、社会へ踏み出す3人に出会った。

【バックナンバー】
第1部(3)彩加 私が幸せなら、親も幸せでしょ
第1部(2)晴人【下】 三田でやれることから
第1部(1)晴人【上】 友達をつくるのは諦めた

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