4515枚の太陽光パネルが1万7千平方メートルの敷地に並ぶ。化学メーカーのハリマ化成が兵庫県高砂市の遊休地に建設した大規模太陽光発電所(メガソーラー)。パネルは陽光をたっぷりと浴び、年間で120万キロワット時の発電を見込む。
「14日に発電を始めたばかり。(電力会社の)買い取り価格は1キロワット時当たり36円で20年間保証される」。同社の土田史明加古川製造所長は説明した。
同社は、太陽光などの再生可能エネルギーでつくった電気を固定価格での買い取りを義務づける制度に基づき、メガソーラー事業に参入。2012年7月に創設された制度では、買い取り価格が高めに設定され、太陽光の発電事業者は全国的に急増した。
この発電所から半径1キロ圏内に、ほかに3社のメガソーラーがある。東播全域では企業だけでなく、県企業庁も参入。同庁が県内で稼働させた6カ所のうち、3カ所が加古川市に集中する。
ただ、安倍政権になって制度のほころびが見え始めた。電力会社が持つ送電網では、再生可能エネによる電力の受け入れ能力不足が表面化。5電力会社が買い取り契約の一時中断に追い込まれた。認定事業者の急増で、パネル価格と設置工事費が下がり、買い取り価格も下落した。初年度に1キロワット時当たり40円だったのが、13年度に36円、本年度は32円になった。
同社はメガソーラーの増設を検討するが、「30円を割り込むと採算は厳しい」(土田氏)と慎重。高砂市のパネル工事会社は「価格が下げ止まらないと、ビジネスが成り立つのかどうか」と先行きの不安を口にした。
JR加古川駅前で月1回、反原発集会を開く市民団体「加印革新懇」の老固(ろうこ)潔一(きよかず)代表世話人は「停止原発に配分している予算を再生可能エネルギーの促進に振り向けるべき。送電網の増強や蓄電の技術革新に力を入れてほしい」と訴える。
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エネルギーをめぐっては、政府・日銀の金融緩和策がもたらした円安で燃料高となり、東播にも暗い影を落とす。地域金融機関の支店長は「運送会社、ガソリンスタンドの景況感が厳しい」と話す。
「もともと価格競争が厳しいのに、ガソリンや潤滑油が高騰して…」。高砂市の給油所で自動車整備業を営む30代店長はうめいた。ネット予約による割引など顧客獲得に知恵を絞るが、急激な円安が企業努力に水を差す。「安さを求めるお客さんが多く、価格転嫁は難しい」と当惑しつつ、「円安を誘導する政治に期待できない。だが、コスト削減にも限界がある」。
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12月2日の衆院選の公示が迫る。国民生活に直結するエネルギー問題や消費税再増税、アベノミクスなどをめぐり、有権者の声を聞いた。