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酒類小売業免許のみで営業してきた「角打ち」のコロナ前の光景。休業中の今、店主は「飲食店の営業許可がない不利益を事前に知りたかった」と嘆く=神戸市内(神戸角打ち学会提供)
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酒類小売業免許のみで営業してきた「角打ち」のコロナ前の光景。休業中の今、店主は「飲食店の営業許可がない不利益を事前に知りたかった」と嘆く=神戸市内(神戸角打ち学会提供)

 街の酒販店の一角に設けられている立ち飲みコーナー、通称「角打ち」。工場労働者の町で発展した大衆文化とされ、神戸は全国的にも多い。この角打ちを設ける店の一部は、今回の緊急事態宣言に伴う酒類提供店への休業要請によって、一般の居酒屋以上の打撃を受けている。背景には飲食店のようで飲食店ではない独自の業態があるといい、宣言の延長で危機は続く。(上杉順子)

 神戸市内で両親の角打ちを手伝う40代女性から、神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に窮状が寄せられた。女性の父親である酒販店主(73)に話を聴いた。

 約40年前に税務署で酒類小売業免許を取得し開店。店頭販売や配達の傍ら、店内にカウンターを設置し、角打ちを始めた。扱うつまみはピーナツや缶詰など、開封するだけで食べられるものが中心だ。

 酒肴を調理するには、市保健所の飲食店営業許可が必要となるが、酒やつまみを購入した客が店内で勝手に飲み食いする「イートイン」の体裁のため、飲食店ではない。店主は「それで何も問題はなかった」と振り返る。

 2000年代初めの規制緩和によってスーパーやコンビニが酒類販売を始めると、店頭販売は下火に。最近は売り上げの6、7割を角打ちが支えていた。

 そこにコロナ禍が起きた。最初の緊急事態宣言で飲食店に時短が要請された際、市に相談すると「補償の対象外になる」と言われた。見た目は飲食店なので夜遅くまで営業するわけにもいかず、毎晩早めに店じまいしたという。もう一つの生命線である配達も、飲食店からの注文が、がくんと減った。

 今回の宣言では、別の事情もあって4月中旬から休業しているが、やはり補償はない。貯金を取り崩す生活が1カ月以上続いており、「飲食の許可を持っているかどうかで、こんなに差が出ると知らなかった。コロナが落ち着いたら、許可を取りたい」と嘆く。

 神戸市内の個人経営店のうち約250軒が加盟する神戸小売酒販組合によると、加盟店で角打ちを併設しているのは70軒ほど。そのうち半数程度は酒類小売業免許のみで営業しているとみられ、同様の相談が寄せられている。

 三橋敏弘理事長(67)は「古い角打ちは、酒屋の免許で営業しているところが目立つ。家賃がかからない自社所有の店舗が多く、多少の体力はあるだろうが、そろそろ限界かもしれない」と危機感を募らせる。組合として、補償の対象にならない店への補助も考えているという。

  ◇   ◇

 角打ちの同好会「神戸角打ち学会」の渡邉敏則会長(73)=神戸市東灘区=によると、角打ちは神戸のほか、北九州、広島など、3交代制の工場が多い街で「(勤務後の)朝から飲ませてほしい。つまみは乾き物でいいから」という労働者の望みに応えて発展したという。

 渡邉会長によると、角打ちの語源は諸説あるが「店の角を借りて飲む」説と、升で量って酒を売っていた昔、店でそのまま升で飲んだことから「升の角」説が特に有力という。神戸市内には現在、「飲食店営業許可のあるなしに関わらず、200軒程度はあるのではないか」としている。

 渡邉会長は「客も経営者も高齢者が多く、後継者がいる話はほとんど聞かない。コロナ禍で廃業が増えるのでは」と危ぶみ、「今は店頭で酒を買い、家で飲むのが協力になる」と話している。

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