• 印刷
先輩と歓談する新入社員たち。入社時からマスク姿が日常で、互いに素顔を知らないケースも=西宮市用海町、日本盛(撮影・秋山亮太)
拡大
先輩と歓談する新入社員たち。入社時からマスク姿が日常で、互いに素顔を知らないケースも=西宮市用海町、日本盛(撮影・秋山亮太)

 新型コロナウイルスの感染予防で定着したマスク。顔の下半分を覆うのが日常となった中、困惑しているのが、今春から新生活を送る新入社員だ。ただでさえ慣れない環境に加え「相手の表情が読めない」といった不安の声が漏れ、入社から2カ月以上がたっても、同僚や上司の素顔を知らないケースもあるという。マスクがコミュニケーションに与える影響とは。専門家らに聞いた。(那谷享平)

 今春、酒造会社「日本盛」(兵庫県西宮市)に入社し、営業部に配属された社員(22)=西宮市=は約20人が同室にデスクを構えるが、6月になっても「マスクを取った顔を見たことがある上司や先輩は8人。そのうち、マスクをしていても顔がすっと浮かぶのは3人くらい」と話した。

 先輩の外回り営業に同行する日々で「相手の表情が読み取りにくく、言葉がとがって聞こえることがある」とも。同期入社で製品部に勤める社員(22)=西宮市=は「食堂での昼食時、マスクを外した先輩たちの顔をずっと見て覚えている」とひそかな努力を明かす。

 「自分の顔を覚えてもらえていないのでは」と心配する新入社員も。神戸市の食品メーカー「ケンミン食品」に入社した社員(22)は「関係づくりが難しくなりそう。自分の表情がどこまで伝わっているのかも心配」とする。

    ◇   ◇

 マスクの着用は、コミュニケーションにどんな影響を及ぼすのだろうか。

 表情とコミュニケーションの関係を研究する藤村友美・同志社大学准教授(感情心理学)によると、人同士が対面した時、相手につられて同じ表情をする「表情同調」という現象があり、互いの親密さを増す要因になるという。実験でも、人は自分と同じ表情をする人に好印象を抱く傾向があるとされる。

 藤村准教授は「検証したわけではないが」とした上で「顔が見えないことで表情同調が減り、マスクなしよりも、相手に親しみを感じにくくなる可能性はある」。「今は対面よりむしろオンラインの方がやりやすい」と、オンラインによる「顔の見える関係」づくりを提案する。

 また新型コロナ禍の前から、マスク着用時のコミュニケーションを扱った研究例がある看護分野からは、「声」の重要性を指摘する意見が上がる。

 看護師で、岡山県立大学看護学科で教える高林範子助教(基礎看護学)は2014年、学生と共同でマスク時の声の聞こえ方を研究。その結果を踏まえ、マスクを着けた際は「声を大きくし、抑揚をつける」ことが重要と指摘。「はっきりとした語り口を意識すると円滑なコミュニケーションにつながる」と助言する。

 過去の研究で、口元が隠れていても喜びや悲しみは目元で伝わることが示されているといい、高林助教は「今はマスクを外せない世の中だが、それでも気持ちは伝わる。話す時は声の調子や笑顔をより意識してほしい」と語った。

新型コロナ
もっと見る
 

天気(9月11日)

  • 30℃
  • 26℃
  • 60%

  • 31℃
  • 24℃
  • 60%

  • 31℃
  • 27℃
  • 60%

  • 31℃
  • 26℃
  • 60%

兵庫県内に 警報 が発令されています

お知らせ