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園芸療法士の助言を受けてフラワーアレンジメントに取り組む高齢者=東京都荒川区、介護老人保健施設「ひぐらしの里」
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園芸療法士の助言を受けてフラワーアレンジメントに取り組む高齢者=東京都荒川区、介護老人保健施設「ひぐらしの里」
感情の測定に用いる機器。約26グラムと軽く、腕に巻いても負荷は少ない=東京都荒川区、介護老人保健施設「ひぐらしの里」
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感情の測定に用いる機器。約26グラムと軽く、腕に巻いても負荷は少ない=東京都荒川区、介護老人保健施設「ひぐらしの里」

 草花に触れることで、心身の健康回復を図る「園芸療法」。認知症予防などを期待し、高齢者施設でも導入され始めた。しかし、花を手に笑みを浮かべるお年寄りは、本当に楽しんでいるのか。ストレスになってはいないか。脈拍数などから感情を可視化し、評価する前例のない研究を兵庫県立大大学院の研究員らが始めた。(永見将人)

 「この花の名前、知っていますか」。「あら、かわいい。ナデシコ?」。「そう、正解。ここで切りましょうか」

 6月のある朝、東京都荒川区の介護老人保健施設「ひぐらしの里」で、要介護のお年寄り4人が園芸療法士とフラワーアレンジメントに取り組んでいた。花を好みの長さに切り、スポンジに刺していく。

 「認知機能が衰えても、日常生活の動作でできる」と解説するのは、同大大学院客員研究員の園芸療法士、菊川裕幸さん(32)。手指のトレーニングや空間認知機能の向上などの効果が見込まれるという。

 常勤の園芸療法士がいる高齢者施設は、全国的にも少ない。園芸療法の導入に積極的な施設の協力で、今回の研究が実現した。

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 車いすの95歳の女性が、「楽しくやらせてもらった」と満足そうな笑顔を見せた。問題は表情や言葉が本心かどうか。感情を出さない人も多く、「本当は嫌なことをさせていないか」と不安を抱える園芸療法士も少なくない。それを明らかにするのが研究の目的だ。

 使うのは手首に巻く腕時計のような機器。昼間や活動時に活発になる交感神経と、夜やリラックスした時に活発になる副交感神経の影響で変動する心拍の揺らぎを、脈拍数などを基に解析し感情を推定する。

 「興奮・喜び」「穏やか・リラックス」「憂鬱(ゆううつ)・疲労」「ストレス・イライラ」の4指標のうち、どれだったかが時系列で示される。この女性はアレンジメントに取り組んだ時間帯のほとんどを「興奮・喜び」か「穏やか・リラックス」の感情が占めていたという。

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 データを集めるため、施設で暮らす72~96歳の12人に「フラワーアレンジメント」「寄せ植え」「折り紙」「塗り絵」を試してもらい、感情データを比較した。全体的に、園芸活動が折り紙や塗り絵より「穏やか・リラックス」を示す時間が長い傾向にあった。

 一方、リウマチを患う人ら、園芸活動にストレスを感じる人も一定数いた。表情や言葉と感情との間に、相関関係も見えてきた。

 菊川さんらは今秋の学会で発表するため詳細な分析を進める。

 この施設の園芸療法士、小浜絵美さん(26)は「成果がデータで明らかになれば、もっと多くの人を巻き込める」と期待。菊川さんは「研究が進めば、個々に合った活動を選べるようになる。認知機能が低下した人でも楽しめる活動を見つけたい」と意欲を見せる。

■専門家「コロナで需要増」 兵庫、震災機に全国先駆け普及

 兵庫県は国内の園芸療法の先進地だ。2002年、公的機関として初の専門課程が県立淡路景観園芸学校(淡路市)に開設された。

 同校で教える豊田正博・県立大大学院教授は、阪神・淡路大震災がきっかけになったと説明。震災後に「『がれきに花を咲かせよう』というボランティア活動が広がり、植物が心を癒やし、回復に役立つことが注目された」からという。

 これまでに同課程を巣立った240人が園芸療法士となり、医療機関や高齢者施設で活躍する。県は普及を図ろうと、新たに園芸療法を採用しようとする高齢者施設などを対象に経費の一部を補助。東日本大震災の被災地にも毎年園芸療法士を派遣し、研修会の開催や緑化支援を続けている。

 豊田教授は「コロナ禍で、医療や福祉の現場だけでなく、全ての人がストレスを感じている」と話し、園芸療法の需要が広がっていると指摘する。(永見将人)

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