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抵抗の3本指を立て、不服従の意志を示す集会の参加者=3月7日、神戸市内
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抵抗の3本指を立て、不服従の意志を示す集会の参加者=3月7日、神戸市内
男性が制作に携わったNUGのインターネットサイト。アウン・サン・スー・チー氏らの写真が並ぶ
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男性が制作に携わったNUGのインターネットサイト。アウン・サン・スー・チー氏らの写真が並ぶ

 2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起き、8月で半年が過ぎた。軍事政権が圧力を強める中、ミャンマー国内の民主派勢力を支えるのは日本など海外にいるミャンマー人らだ。国軍から逃れる軍関係者を支援し、報道の自由がなくなった現地の実態を発信するための計画も進める。関西で活動するミャンマー人男性が神戸新聞の取材に応じ、民主化を求める思いを語った。

■弟は追われてタイへ

 男性は30代。数年前に来日し、日本語学校に通った後で就職した。現在は関西で暮らす。

 親類には教員が多い。アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟が大勝した昨年の総選挙で、弟は連盟の村の局長を務めた。

 クーデターが起き、弟は軍から追われるように。

 「国軍は弟のような立場の人がうそをついたから、みんな国民民主連盟に投票したと言って捕まえていった」

 5月上旬にようやく連絡が取れた。国境を越えてタイに逃げて命は助かっていた。今もタイで隠れて生活し、帰国できるめどは立たない。

■800人の脱出手助け

 男性は海外に散らばるミャンマー人らとともに、民主派が発足させた「挙国一致政府(NUG)」を支援するようになった。ホームページの制作などに携わり、現地とのオンライン会議で、必要な物資の調達計画を立てる。

 国軍関係者の中には、クーデターと市民への弾圧をよく思わない人もいる。そんな人々の脱出を助けるのも男性らの役目だ。日本では数人しか関わっていないという。

 ミャンマー国内の人が関わると危険なため、海外から脱出者とやりとりし、安全なルートを設定。少数民族が統治する地域などに逃がす。ミャンマーにいた頃の知人らに現地で協力してもらうという。

 これまで逃亡を助けた軍関係者は約800人にも上る。医者や技術者など教育水準が高い人が7割程度を占める。30~50代が多いという。

■惨状を世界に発信

 ミャンマー国内では、外国人ジャーナリストが拘束されるなど、報道の自由がなくなっている。

 何が起きているのか、取材も難しい状況だ。男性はアジアと欧米にいる大学時代の仲間3人でチームをつくり、国内に残る住民が取材し、安全に発信できる仕組みづくりにも取り組む。

 現地では十数人が集まっている。欧米の友人はサイバーセキュリティーの専門家。どのように取材し、写真をアップロードするのかなどのマニュアルを作成中で、メディアとの連携も模索する。

■日本みたいな国になりたい

 男性は軍事クーデター後の半年をこう振り返る。

 「日本みたいな国になりたいと思ってきた。勤め先では、ミャンマーに会社をつくりませんかと提案した。でも先が見えなくなった。自分がこうなってほしいというのが消えていった」

 「でも、だからと言って、僕らがあきらめるわけにはいかない」

 NUGの支援とともに、日本での抗議集会やデモにも参加し、国際社会に訴え続ける。

 「ミャンマーに帰ったら殺されるかもしれない。そのぐらいの危険は考えられるが、今の時代で変えたいんです。子どもたちが豊かな生活ができれば、自分が死んでも大丈夫です」

 半年がたったミャンマー国内では新型コロナの感染が拡大し、1日で数百人が死亡している。コロナ対応をしていたボランティアらは国軍に捕まり、不服従運動もあって医療機関は機能していない。

 「この半年で国はボロボロになった。今の流れではもっと時間がかかるかもしれない。でも黙っていちゃ駄目です。世界の人々には僕らに目を向けてほしい。ちゃんと見てくれれば、何をするべきか分かるはずです」。(高田康夫)

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