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「豊岡演劇祭」で会場前に列をつくる来場者ら=2020年9月、豊岡市立野町
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「豊岡演劇祭」で会場前に列をつくる来場者ら=2020年9月、豊岡市立野町
伊藤将人さん
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伊藤将人さん

 国の天然記念物コウノトリの野生復帰や「演劇のまちづくり」など独自施策で全国的に知られる兵庫県豊岡市。その推進役だった市長が落選した今春の選挙戦投票動向が、地方自治などの研究者からも注目されている。地域考察メディア「KAYAKURA(カヤクラ)」代表の伊藤将人さん(25)は、全国の文化施策の共通課題として、合意形成過程、市民と移住者との社会的葛藤の視点から読み解いている。(石川 翠)

 伊藤さんは2020年から豊岡市を調査。選挙後も移住者と地域住民のインタビューを進めている。当初は、自治体などが登録している移住支援サイトで同市が上位に入っていたことから注目した。

 伊藤さんは「自治体の文化施策は2000年代からまちづくりの手法として注目された」とする。人口増が課題となる中、個性的な施策が競われ、「若者・よそ者」といわれる、これまでにない発想が必要という価値観が支配。「クリエーティブな人に来てもらうことと、文化政策とは相性が良かった」と指摘する。「瀬戸内国際芸術祭」(香川県、岡山県)などが成功を収め、国も支援をしてきた。

 多くの自治体が追随したが、伊藤さんは四つ課題を挙げる。事前に市民に知らされる場面が少ないなど政策形成での「プロセスの不透明さ」▽市民を巻き込まずに、一部の自治体幹部や議員、芸術団体の中にとどまる「アクターの偏在」▽資金が上から下りてくる「垂直関係」▽作品が生まれる過程が見えない「もう一方のプロセスの不透明さ」-だ。「豊岡の中でもそうした課題が少なからずあったのかもしれない」

 「コウノトリの野生復帰事業はもともと地域にあった素材を発展させる施策で、環境や社会的な意義も付いてくるため説明しやすい。が、演劇はその答えが難しい」と伊藤さん。文化施策では、芸術家と触れ合ったり、一緒に何かを作ったりするという「過程」から、市民に愛着や共感が生まれてくる。「(インタビューで)経済や教育など良い効果が生まれてきていると語る人も複数人いる。時間をかけることが最大の武器になるのでは」と提案する。

 また、移住者と住民間のコンフリクト(社会的葛藤)について分析。豊岡市は移住者が増加しているが、演劇やジェンダーギャップ(男女格差)解消など理念に共感した移住が少なからずあったとみてきた。

 一方で「政策として重点化すると、外から来た人にお金が使われているように映り、地元で頑張ってきた住民はどうなるんだという思いが出てくることはよくある」といい、投票行動につながった可能性を探る。

 僅差の選挙結果については「ある種の分断、壁があることが可視化されてしまった面はあると思う」と伊藤さん。「そこに対するケア、解消のための努力を行政も民間もしていった方がいいのでは」と話す。

【いとう・まさと】1996年、長野県松本市生まれ。専門は社会学、政策学。一橋大学大学院社会学研究科に所属し、長野県池田町と東京都の2拠点で活動。主な研究テーマは国内外の地方移住と政策の関係、農村地域社会における地元住民と移住者など多様な人の社会的葛藤と共生など。

一橋大・伊藤将人さんに聞く
(※会員向け記事)

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