7月末のことだ。神戸市須磨区の須磨海岸の砂浜に花を手向け、手を合わせる男性がいた。神戸市灘区の石田行典さん(51)。12年前に小学1年だった長男の遼太郎君=当時(6)=をこの海で亡くした。命日の供養は、十三回忌の今夏で最後にした。遼太郎君が死後につないでくれた不思議な縁が、前を向かせてくれたからだ。(吉田敦史)
遼太郎君は2009年7月30日、母と弟に親類を加えた5人で須磨海水浴場を訪れた。
1人で海に入って戻らなくなり、海中に沈んでいるのをライフセーバーが発見。病院に運ばれたが助からなかった。
四十九日の法要後、石田さんは責任を感じている妻に「君のせいじゃない。君は悪くない」と泣きながら伝えた。それっきり、互いに遼太郎君の話に触れられなくなった。石田さんは家族と別れ、独りになった。
明るく、活発だった遼太郎君。その輪郭が、時がたつにつれて少しずつぼやけていくような気がして、石田さんはつらかった。
◆
事故からちょうど10年となる19年の命日、石田さんは供養のため須磨海岸を訪れた。
ライフセーバーの詰め所へあいさつに行くと、「石田さんに会いたがっている」という男性を紹介された。
須磨海岸で海の家「カッパ天国」を営んでいた幸内政年さん(45)。現場に一番近い海の家だったこともあって、10年たっても事故を忘れず、スタッフと共に心を寄せていた。
営業を終えた深夜に誰かが走り回るような音がしたり、電灯が明滅したりするのを「亡くなった男の子が遊んでいるんだ」と考え、姿の見えない遼太郎君の存在を感じてきた。
その夏で海の家の営業を終えることを決めていた幸内さんは、石田さんにそれまでの不思議な体験を伝えたかったのだという。
石田さんは「遼太郎かもしれませんね」と受け止め、幸内さんと並んで砂浜に花を手向けた。幸内さんは、スタッフが遼太郎君のことを思い浮かべながら作った人形とイラストを石田さんに手渡した。それらを手に、石田さんが海岸を去った後の夕方-。
海岸の西の雲が虹色に彩られた。
見たこともない美しさだった。「きっとあの子は家に帰った後、天国に行ったんだ」。幸内さんにとっても、一区切りがついた気がした。
◆
以来、石田さんは幸内さんと親交を深め、今夏の十三回忌にも幸内さんを招いた。新型コロナウイルス禍で海開きはされておらず、海水浴客の姿はない。おだやかな朝の海にライフセーバーがボートを出し、波間に花を浮かべた。
石田さんは「遼太郎は事故後もここにいて、幸内君たちが見守ってくれていたと思うと、素直にうれしかった」と振り返る。
自身の中に抱えていた言葉にできないわだかまりも和らいだ。
「すっきりした気持ちで、未来に向かって遼太郎と歩んでいきたい」。石田さんは言った。
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