阪神・淡路大震災の被災者に国と自治体が貸し付けた「災害援護資金」について、神戸市が未返済分の全709件(利息含め約11億5千万円)の返済を免除する方針を固めたことが24日、分かった。新型コロナウイルス禍による経済状況の悪化や高齢化で返済に苦しむ借り主が増え、回収は難しいと判断した。震災から26年を経て、残された課題に一区切りが付くが、今後は兵庫県内の他市でも残る債権の放棄が焦点となる。
災害援護資金は当時、被災者がまとまった現金を手にできる唯一の公的支援だった。県内13市で計5万6422件約1309億円が貸し付けられ、このうち神戸市分は計3万1672件約777億円に上った。
借り主には低所得者が多く、長引く不況や高齢化で次第に返済が滞るように。最近ではコロナ禍で仕事がなくなったり、収入が減ったりして返済に窮する人も出てきていたという。
同資金の返済免除は、借り主が死亡した場合などに限られていたが、国は2015年、自治体が支払い能力がないと判断した人も対象とするよう通知。19年の災害弔慰金法の改正で、低所得者や連帯保証人らにも広がった。
神戸市は免除対象者の手続きを進めながら、少額返済者からの回収業務を継続。しかし、免除対象ではない行方不明者らが317人いるほか、回収見込み額を業務コストが上回る事態が起きていたという。
市は「このまま回収を続けても完済は見込めない。被災者の生活再建を考えれば、区切りを付けるべきだと判断した」とし、返済に応じていない6人を除く全ての債権を放棄する。
同資金の神戸市分は、市が3分の1、残りを国が負担している。このため、国負担分も市が肩代わりし、利子を含めた未返済分を国に返還する方針。市は関連議案を31日開会の市会定例会に提出する。
県によると、神戸市以外では、返済を終えた姫路、三木市を除く10市で約8億1200万円(3月末現在)が未返済となっている。(三島大一郎)
【災害援護資金】 災害弔慰金法に基づき、全半壊世帯などに最大350万円を貸す制度。国が3分の2、残りは都道府県または政令市が負担し、市町村が貸し付け事務と回収を担う。阪神・淡路大震災での返済期限は10年だったが、国は2006年から償還期限の延長を続けている。19年の法改正では保証人に加え、住民税などを除く年間所得が150万円未満、預貯金20万円以下などの要件を満たす借り主も返済免除の対象になった。
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