日本最大の暴力団「山口組」（神戸市灘区）から「神戸山口組」（同市中央区）が分裂して、２７日で丸６年となった。警察庁によると、この間に神戸山口組から離脱した指定暴力団「絆会（旧・任侠山口組）」（兵庫県尼崎市）を含め、３団体の間では全国で計１４９件（７月末時点）の衝突事件が発生。山口組と神戸山口組が「特定抗争指定暴力団」に指定された昨年１月以降は１３件にとどまるが、兵庫県内では衝突事件と認定されない発砲も起きており、終結の気配はない。

　神戸市兵庫区の市営地下鉄和田岬駅から北へ１５０メートル。今月５日午前１０時半ごろ、同区三石通の一軒家やアパートが並ぶ下町に突如、銃声が響いた。兵庫県警によると、何者かが神戸山口組傘下の男性組長（６７）に向けて複数回発砲し、１発が太ももをかすった。

　住民の多くはそこに暴力団幹部が住んでいたことすら知らず、近くに住む７０代主婦は「今でも横を車が通ったら神経質になる。またあるんじゃないかと思って怖い」と声を潜めた。

　３月には兵庫県西宮市の社員寮に銃弾が撃ち込まれ、その３週間後には神戸市兵庫区福原町の歓楽街でビルのシャッターに弾痕が見つかった。福原町の事件は６０代の男が逮捕されたものの現役組員ではなく、残る２件は容疑者の特定にも至っていない。

　３カ月に一度のペースで銃弾が飛び交う状況に、県警幹部は「抗争との関連は不明」としつつ、「白昼に街中で拳銃を撃つ行為はとんでもないこと。容疑者は必ず摘発し、住民の安心のため周辺警戒にも力を入れる」と強調する。

　終わりの見えない分裂抗争だが、情勢を見れば、近年は山口組側が攻勢に出る構図が鮮明になった。神戸山口組系の組幹部が移籍したり、襲撃を受けた幹部が引退したりと、同組の劣勢を伝える情報が飛び交う。

　そして警察当局も注目するのが、かつて山口組の本流と言われ、神戸山口組の結成を主導した「山健組」（同市中央区）の動向だ。山健組は２０１９年、抗争に絡む殺人未遂事件で組長が逮捕された。さらに昨年の夏以降、複数の幹部が神戸山口組から離脱を図った。

　離脱派は独立組織として活動するのか、他団体と連携するのか。動向が注視されていたが、捜査関係者によると、暴力団関係者の間では「山口組に合流する」との情報も流れているという。ある捜査員は「山口組側の人間がうわさを流している可能性もあり、状況は流動的だ」と話す。

【山口組の分裂】　現体制の組織運営や高額な上納金（会費）への反発から２０１５年８月、一部の直系団体が離脱して「神戸山口組」を結成した。両組織の衝突が相次ぎ、警察庁は１６年に対立抗争状態と認定。１７年には神戸山口組が再分裂して「絆会」（旧・任侠山口組）が発足し、三つどもえの状態となった。