新型コロナウイルスの感染拡大により、兵庫県内の多くの遺族は15日、自宅などで亡き人を悼んだ。東京での全国戦没者追悼式の規模は昨年に続いて縮小。以前であれば同県遺族会は広く参加者を募り、100人前後が参列したが、今年は遺族代表の柿原啓志さんら3人のみとなった。
昨年と同様、新型コロナの影響で参加者数が限定された上、感染が急拡大。当初11人を予定した参加者をさらに絞らざるを得なくなった。
20年ぶりに参列するはずだった同県伊丹市の林泰三さん(77)は出席できず、残念がる。家族との食卓では気軽に戦争の話ができず、もどかしさがあった。式の参加をきっかけに話が広がればと期待していた。
終戦前、林さんが2歳のときに、当時31歳だった父の藤治郎さんはフィリピンで戦死した。林さんは定年退職後に「父を身近に感じたい」と県遺族会の活動を開始。7年前には父が命を落とした現地のジャングルに出向いた。「ありがとう。こんなに大きくなったよ」。涙ながらに語りかけた。遺骨はなく、亡くなった日も不明。このとき三つほど小さな石を持ち帰り、墓に納めたという。
式の当日、テレビ画面の前で祈りをささげた林さん。「遺児が亡き家族を感じられ、戦争の悲惨さと向き合える機会。次こそは行きたい」と式典の様子を見つめた。(小谷千穂)