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触って楽しめる作品が並ぶ会場=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
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触って楽しめる作品が並ぶ会場=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
自作の展示空間で撮影に応じた東影智裕さん=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
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自作の展示空間で撮影に応じた東影智裕さん=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
《視界 camel d‐007》2013年=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
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《視界 camel d‐007》2013年=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
《侵食1》2013年(部分)=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
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《侵食1》2013年(部分)=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
《視界 cow s‐001》2010年。手に載せて重みも感じられる=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
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《視界 cow s‐001》2010年。手に載せて重みも感じられる=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館

 合成樹脂から生まれた動物たちに命が宿った。黒く潤んだ瞳や繊細な毛並みを持ち、赤くただれたような傷も生々しい。精巧なオブジェを飾る「東影智裕展 触知の森」が、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開かれている。生と死のあわいを表現して、見る者を引き込む。そんな作品12点に触れられる企画が実現した。より深く感じたい。(小林伸哉)

 「動物そのものを作ろうとする気はほとんどないんです」と美術家の東影智裕さん(43)=兵庫県姫路市夢前町。「動物の姿の中に、人の心や魂、生と死、そういう見えない存在のようなものを込めたい」と語る。

 作品に触れられる「美術の中のかたち-手で見る造形」展として企画された。目の不自由な人々にも楽しんでもらう展示は、今回で31回目。東影さんの出品は昨年の予定だったが、コロナ禍で延期されていた。

 東影さんは高砂市出身。小学校低学年のころに祖父が亡くなり、葬儀や初盆の行事を経験するうち「生きている上で『死』は存在する」と実感し、創作の原点となった。地元の祭りや大塩天満宮(姫路市大塩町)の「毛獅子」の造形美からも影響を受けたという。

 朝来市にある生野学園高校を卒業後、武蔵野美術学園(東京都武蔵野市)で版画を学んだ。立体作品の創作に転じ、2007年ごろから動物の頭部をモチーフに作り始めた。好きなラクダや飼った経験があるウサギなどを選んだ。

 「自分の手で作り上げたい」から型は取らない。一点物の作品だ。エポキシ樹脂を塗り重ねて形作る。粘土状の樹脂が固まる前に、彫金用のかぎ針のような器具で押さえつけ、微細な筋を入れて毛並みを表す。アクリル絵の具で着彩。展示中のウシの作品は完成までに半年を要した。

 動物の頭を、人の表情を映す器に見立てる。人を見る場合と違って、動物なら年齢や性別などを気にしないはず。「見るときのバイアスが外れ、表情や内面に集中し、自分の経験を投影してもらえる」と考える。

 「死そのものではなく、生と死の中間ぐらいのものを作りたい。生きているような死んでいるような『これから死ぬのかも』というものを作ろうとしている」

 オブジェには生と死の気配が混じり合う。顔の片側には、穏やかで生気に満ちたような表情が浮かぶ。反対側では、苦痛を感じているのか、瞳は閉じかけ、口元がゆがんでいる。

 皮膚がただれ、血がにじんだような傷も表し、生き物の宿命としての時間の流れを示す。東影さんは「生きていると、けがや病気がある。きれいなままの姿ではいられないので…」。飼っていたウサギが亡くなったのが「傷を表現する大きなきっかけかも」と話す。

 流木を多くの作品に生かしてきた。「流木は不思議だな。根っこが無くなった状態で、死んでいるのにその姿をとどめている。生きているのか、死んでいるのか神秘的で」

 ウサギの頭部のオブジェを流木に配した作品《侵食》シリーズは、毛並みが幹や枝を覆っていくようだ。記憶が時を経て変容し、新たなイメージに侵食される様子を表したという。

 実際に作品に触ってみると-。見た目と触感にはギャップがあり「だまし絵の立体版のよう」と同館の岡本弘毅学芸員。「やわらかさとかたさ、リアルと象徴、生と死…。さまざまな相反するような要素を、表現で両立させていて興味深い」と魅力を解説する。

 東影さんは「素手で首を抱くようにして作っている」と語る。触りながらの鑑賞は、創作過程の追体験にもなる。「触れることで精神的にも距離は近づく。作品や自分の内面と対話する体験をしてほしい」

     ◇

 会期は26日まで。6日までメンテナンス休館。月曜と21日は休館(祝日の20日は開館)。会場で配る使い捨て手袋を着けて作品に触るなどの感染防止対策を実施している。作品保全のため優しく触るよう協力を。一般500円ほか。兵庫県立美術館TEL078・262・1011

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