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神戸大大学院医学研究科の岩田健太郎教授(感染症治療学)=神戸ポートピアホテル/情報文化懇話会
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 菅義偉首相は16日、就任から1年を迎えます。政権発足当初から新型コロナウイルスの対応に追われ、今月退陣を表明しました。自民党総裁選を経て、日本のかじ取りは新しい首相に託されます。未曾有の危機に直面する中で、求められるリーダー像とは何か。

■神戸大大学院医学研究科教授の岩田健太郎さん(50)=感染治療学

 --菅首相の1年で、コロナ対応についてどう評価しますか。

 コロナ対応のリーダーとしては極めて不適切で、良くなかった。菅首相に限ったことではなく、日本のリーダー全体に言えることですが、最も問題なのはビジョンが全然示せなかったことです。コロナの対策で、世の中をどういう風にして着地させたいのかというビジョンが全くありませんでした。患者の増加、病床や検査の不足といったことが起きてからの対応だけなので、常に後手後手になっていました。

 メッセージの伝え方も非常に不明確でした。コロナ対策について、ワクチンを打つことで安全安心の五輪ができると言った反面、感染者が増えてきた後に緊急事態宣言を出しました。さらなる対策が必要とお願いしながら、「自分たちは間違っていない」という神話にすがりつき、うまくいっているとアピールしていました。真逆のメッセージを同時に出すので、受け手としては結局どう判断したらいいかわからなくなります。伝わらないのは当たり前ですよね。

 海外では、ニュージーランドやドイツの首相のメッセージが非常に一貫していてわかりやすく、人の心に伝わりやすかったことを考えると極めて対照的です。

 「プランB」がなかったことも大きいです。これも日本のリーダー、もしくは官僚に共通する問題です。ワクチン接種は途中から非常にうまくいっていたのは良かったですが、それ以外のプランがありませんでした。ワクチンが間に合わないと次のプランが出てきませんでした。

 --コロナ対策でこれまで緊急事態宣言が4回(菅首相就任後3回)発令されました。

 患者が増えた後で、ほかに手がなくなってから出しているので、しょうがないですよね。本来だったら、宣言を出さざるを得ない「じり貧」の状態を回避するのが一番理想的だと思います。

 ニュージーランドはデルタ株が1例出た時点で街をロックダウンしました。つまり緊急事態にならないようにする明確なビジョンがあって、それに基づいたプランを実行に移して、今コロナを抑え込もうとしています。

 でも日本の場合、そもそもコロナを抑え込むことができないとか、現実的ではないとかいう考えに傾いてしまっています。

 感染者が増えても、医療はそんなに逼迫(ひっぱく)していない、死者や重症者が増えていないと言って問題を野放しにして、逼迫して初めて緊急事態宣言を発令するわけです。一度逼迫した医療は、そんなにすぐに改善しませんので、今度は期限が来て延長するという繰り返しになります。

 起こってから動く後手後手の対策だからです。先手を打って、起こる前に対応しておけば、みんなこんなにしんどい思いをしなくて済みました。

 --菅首相の性格面が政権運営にどう影響したと思いますか。

 まわりにいい加減なことを言う人ばかりをはべらせてしまい、楽観的シナリオしか受け付けなくなりました。それは自ら招いたものです。

 菅首相の特徴として、言葉遊びをして、論点をずらし、質問に答えないことがあります。官房長官時代に味をしめたと思いますが、そういう理不尽なことをしても自分は許される存在だと勘違いをしたのでしょう。首相になっても、同じようなやり方をして、総スカンを受けてしまいました。権力を持ってしまったがゆえの誤謬(ごびゅう)に気づけなかったということだと思います。

 

 --東京五輪・パラリンピックを原則無観客開催した判断についてどう評価しますか。

 それは政府だけではなくて国際オリンピック委員会(IOC)、日本オリンピック委員会(JOC)、メディアを含むスポンサーなどの意向もあるので難しく、菅政権だけの問題ではないと思います。

 ただ、僕はずっと延期すべきだと思っていたし、今でも延期すべきだったと思います。延期しなかったせいで無観客をしいられ、アスリートも十分満足できるような大会になりませんでした。

 五輪期間中は感染対策がなおざりにされたので、その間、コロナへの危機感は醸し出されず、感染者が一気に増えてから、みんなやっと危機感を覚えました。五輪が盛り上がったおかげでコロナが増え、その影響でパラリンピックが尻すぼみになってしまいました。パラリンピックのアスリートが一番の犠牲者で、気の毒だと思います。

 --今後、コロナ禍はまだしばらく続くとみられますが、コロナ対応など危機対応に直面するリーダーにどういった資質が求められますか。

 ビジョンをちゃんと持って、科学に裏打ちされた、一貫して矛盾のないメッセージを出し続けることです。また、プランAがうまくいかなくなったとき、BやCといった代替プランを出すべきです。うまくいかなかったことは、きっちりと認める誠実さも必要です。

 科学的判断力、ビジョン、誠実さ。政治家だったら当然持っていなければいけない資質が大事です。

(井川朋宏)

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