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元理研の高橋政代氏
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元理研の高橋政代氏

 神戸を拠点に、世界で初めて人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた網膜細胞移植に成功した元理化学研究所プロジェクトリーダーの高橋政代氏(60)が、製品化を担う企業の動きが遅いために実用化が進んでいないとして、自身が社長を務める企業にも特許を認めるよう国に「裁定」を請求したことが29日、分かった。特許庁総務課によると、裁定が受理され、審議が始まるのは1972年の制度開始以来初めて。

 使用を求めているのは「網膜色素上皮細胞の製造方法」に関する特許。理研と大阪大、再生医療ベンチャーのヘリオス(東京)が権利を持つ。

 高橋氏によると、製品化のための特許使用に関し、ヘリオスは独占的に理研との交渉権を持つ。ただ、ヘリオスが患者への臨床試験(治験)を始めないため、高橋氏が社長を務めるビジョンケア(神戸市中央区)にも特許の使用を認め、同社が治験を進められるよう求めている。2016年から複数回、ヘリオスなどに協議を申し入れたが不調に終わり、裁定の請求を決めた。

 高橋氏は再生医療を早期に実用化するため、19年に理研を退職してビジョンケアに移った。開発チームの研究者約60人も多くが同社に移籍し、治験を進める体制は構築されていると主張。認められれば、同社はヘリオスに特許使用料も支払うとしている。

 1990年代後半から網膜の再生医療に取り組んだ高橋氏は2006年、京都大から神戸医療産業都市の理研に移って研究開発チームを率いた。14年には世界初の再生網膜細胞の移植手術に成功。同時期に、実用化を見据えてヘリオスを設立した。理研在籍中には20件以上の特許取得に関わった。

 高橋氏は「治験が進まず、計画から5年ほど遅れている。日々多くの人が失明し、治療法の実用化は急務」とした上で、「研究者がこうした契約に泣き寝入りしないよう声を上げた」と請求の理由を説明した。

 ヘリオスのコーポレートコミュニケーション室は「現在裁定手続き中のため、当社からの回答は差し控える」とした。

 特許を巡る裁定は申請自体が珍しく、認められるためのハードルは高いとされる。特許庁によると、専門家による審議会を開催予定だが、メンバー構成や最終判断の時期は未定という。

 企業の特許戦略に詳しい中垣雄一朗弁理士(45)=神戸市=は「申請された特許が公共の利益のために特に必要と判断されるには、代替手段がないことや放置すれば死者が出るなど回復不能な被害が発生することを示す必要がある。現状では認められない可能性が高い」と話している。(高見雄樹)

【特許の裁定制度】公益的な理由により、特許権を持つ人の同意を得ることなく、国が第三者に特許権を使えるようにする制度。特許を得た発明が実施されないことで、社会的な損失につながることを防ぐ。請求先は特許庁長官だが、特許法93条に基づく「公共の利益のために特に必要な場合」は経済産業相に請求する。

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