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湯船に漬かって展示作品を紹介する田岡和也さん=神戸市兵庫区笠松通6、笠松湯
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湯船に漬かって展示作品を紹介する田岡和也さん=神戸市兵庫区笠松通6、笠松湯
頭上のタイル画と「兵庫景」との相性はばっちり。独特の形状をした浴槽も名物だ=神戸市兵庫区笠松通6、笠松湯
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頭上のタイル画と「兵庫景」との相性はばっちり。独特の形状をした浴槽も名物だ=神戸市兵庫区笠松通6、笠松湯
田岡和也さんがデザインしたキーホルダーやTシャツなど笠松湯グッズも販売している=神戸市兵庫区笠松通6、笠松湯
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田岡和也さんがデザインしたキーホルダーやTシャツなど笠松湯グッズも販売している=神戸市兵庫区笠松通6、笠松湯

 湯煙の向こうにカラフルなアート作品が見える-。神戸市兵庫区笠松通6のレトロな銭湯「笠松湯」で、近所に住む画家田岡和也さん(38)の風景画を飾る「裸で観る作品展『兵庫景イン笠松湯』」が開かれている。厳しい経営が続く銭湯を、アートで盛り上げようというユニークな試み。ひとっ風呂浴びながら眺めれば極楽気分。「いい絵だな~♪」と、思わず口ずさんでしまいそうだ。(小林伸哉)

 笠松湯は1948(昭和23)年に創業。JR和田岬駅や三菱重工業神戸造船所に近く、昭和40年代まではにぎわったが、自宅風呂の普及や阪神・淡路大震災後の人口減などで、売り上げの低迷が続いている。

 展示作の「兵庫景」は、田岡さんが兵庫区内の身近な風景を描くシリーズ。水性ペンと折り紙を使用、限られた色数を強みに、あえて人物は描かず、大胆に画面を構成する。「神戸百景」などの作品で知られる版画家川西英(ひで)さん(兵庫区出身、1894~1965年)の作風が好きで、「兵庫景」はオマージュの性質も帯びるが、「普段の飾らないリアルな神戸を描いて、人口減が進む街を応援したい」と説明する。

■地域つなぐアート

 田岡さんは香川県出身で、大阪芸術大学で油絵を学んだ後、会社勤めをしながら創作を続けてきた。結婚を機に兵庫区和田岬地区に住んで十数年、「人との距離がものすごく近い」のが魅力という。2017年秋~20年春、九州に単身赴任したところ「兵庫区の風景が無性に恋しくなり」描き始めた。兵庫景の数は約250点に上る。

 作品はこれまで図書館やカレー店、地下鉄の駅などで展示されてきた。銭湯は初めてで「美術館での鑑賞は、読み解きを迫られるようでエネルギーを使うが、お風呂ならリラックスして見られるのでは」と語る。

 近年、銭湯とアートのコラボに注目が集まっている。今年は東京の銭湯約500カ所でアートプロジェクトが開かれ、大阪の心斎橋パルコでは銭湯グッズが販売された。横尾忠則現代美術館(神戸市灘区)は16~17年、銭湯に見立てた展示を披露した。

 「交流の場である銭湯には地域コミュニティーと美術、とりわけ現代美術とのつながりを築く可能性がある」と指摘するのは甲南大文学部の服部正教授(54)=美術史・芸術学。そもそも銭湯では、人々が自然にタイル画などを楽しんできた。「視覚文化がじんわりと心身にしみ込む場で、人々の交流を促すような名所絵が好まれてきた。地域で愛される場所を描いた田岡さんの風景画が、銭湯に展示されるのは理にかなう」と分析する。

■グッズ販売

 今回、地元の笠松商店街のアーケード、食堂、駄菓子店、兵庫大仏、JR和田岬線の電車、兵庫区で奮闘する他の銭湯などを描いた42点を並べた。焼き芋を移動販売するトラックの絵も。同区内では「や・き・い・も⤵」と語尾が下がる独特のアナウンスで親しまれており、鑑賞者が目撃情報の交換で盛り上がる人気作だ。

 「震災後、みんなが築いた兵庫区の風景。当たり前が当たり前ではないと気づいた。絵を見て、街をふらふらして、和田岬のいいとこに気づいてほしい」と田岡さん。笠松湯の3代目経営者、初田浩子さんは「懐かしくほっとする絵で、心が温まる」といい、今後も「若者を呼び込みたい」と、アート展示などを計画する。

 10月11日まで。午後3時半~同8時半、火曜定休。入浴料(大人450円など)で観覧できる。田岡さんデザインの笠松湯グッズも販売。初田さんは「笠松湯●番台娘」として、ツイッターで情報発信中(ユーザー名は@bandai_musume)。アート展示などをする人を募る。

※⤵は右下へ弧を描く矢印、●は温泉マーク

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