大事な仕事があるのに熱が出た子どもの預け先が見つからない-。自身が苦労した経験から、兵庫県西宮市の上田理恵子さん(59)は20年前、病児にも対応するベビーシッター派遣会社「マザーネット」(大阪市)を立ち上げた。共働き世帯の増加を背景に事業は拡大。さらに女性が活躍できる社会の実現を願い、育児と仕事の両立支援策や課題を本にまとめた。(石沢菜々子)
タイトルは「女性活躍が企業価値を高める-子育て中の部下を持つ経営者・上司のためのマニュアル」。経営者や子育て中の親ら幅広い人に向けてつづった。
上田さんは大学卒業後、大手空調メーカーに就職した。結婚し、2児の母になると、保育園から「熱が出ました」と呼び出しが相次ぐ日々。大事な取引先との約束がある日に子どもが発熱し、日時の変更を願い出ると「一生来なくていい」と返された。
3時間だけでも子どもを見てもらえれば、仕事に行けるのに…。そんな思いを実現するため、2001年に退職、起業した。シッター派遣に加え、親たちの要望に応えて家事代行サービスも導入。信頼できるスタッフを自ら開拓した。
社員に補助を出す企業の後押しもあり、関西で約1万人が利用。女性社員らの両立支援策を模索する企業の依頼で13年から、育児休業中の社員の保育園探しを手伝うサービスも始めた。
こうした経験を踏まえ、今回の著書を執筆。女性活躍の現状を解説しつつ、妊娠中や出産後に抱える両立の悩み、企業の対応の仕方を具体的に紹介した。
企業からは「女性社員が何に困っているのか分からない」という相談が絶えない。そこで、昨年末に共同委員長を務める関西経済同友会の委員会で、会員企業の社員や経営者の「本音」に迫るアンケートを実施。結果を著書に盛り込んだ。
子どもを希望の保育所に入所させる「保活」の最新事情や、苦労を乗り越えた先輩ママらへのインタビューなど、共働き世帯に役立つ情報も掲載。上田さんは「まだまだ企業の本気の取り組みが足りない。それぞれが望む生き方を実現できるよう、これからも寄り添いながら社会に代弁していきたい」と話す。
神戸新聞総合出版センター刊、1870円。
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