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今月13日、病院に入院中の夫=明石市内(妻提供)
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今月13日、病院に入院中の夫=明石市内(妻提供)
コロナウイルス肺炎などと書かれた診断書と、胸部のCT画像のコピー
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コロナウイルス肺炎などと書かれた診断書と、胸部のCT画像のコピー

 夫婦が顔を合わせたのは半年ぶりだった。

 今月13日のことだ。4度目の緊急事態宣言が解除されて2週間になる。

 兵庫県明石市内の病院に入院中の夫(73)は、気管切開をして人工呼吸器を装着しており、言葉を発することができない。

 ベッドの傍らで、妻(68)は声をかけた。

 「あなたも私も頑張って、やっと会えましたね…」

 夫がうなずく。妻の目に涙があふれた。

     ◆

 脳の病気の手術のため、夫が専門病院に入院したのは昨年9月だった。

 12月上旬に退院が決まっていたが、その直前、院内で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。夫がいた4人部屋の1人に陽性が確認され、夫も感染した。

 コロナ病床がある病院に転院したのは12月5日。その後、検査で陰性になり、もとの専門病院に戻ったのがクリスマスだった。その時、妻は医師から、夫の肺のレントゲン写真を見せてもらった。肺に、白い影が浮かび上がっていた。

 2021年の正月3日。やっと退院の日を迎え、夫は明石市内の自宅に戻った。喜びもつかの間、1週間ほどして、咳が目立つようになる。

 1月18日。血中酸素濃度が低下した。次の日、コロナ病床がある病院に再入院が決まり、夫は救急車に歩いて乗り込んだ。妻は病室で「明日また来ますね」と話しかけた。

 だがその夜、体調が急変する。翌日、妻が目にしたのは、体に酸素が送り込まれる夫の姿だった。

 数日後、病院から「会わせたい人がいたら会ってください」と言われた。

 死と隣り合わせの日々。妻は医師に訴えた。

 「主人は生きたいと思う。このままでは悔いが残ると思うので、最後まで諦めないでください。お願いします」

     ◆

 その後、命の危機を脱し、病院から「奇跡です」と言われた。ただ、肺のダメージは大きく、人工呼吸器は外せない。夫は4月、別の病院に移った。

 それからずっと感染拡大で面会がかなわなかった。妻は手紙を書き、庭に咲いた花の写真を添えて何度も病院に託した。

 会えない約半年の間、感染者の急増や減少が連日ニュースで伝えられた。

 「一人一人の人生や家族のことは、数字からは見えません。コロナの現実をもっと知ってほしい」と妻。

 2人で穏やかな老後を過ごすはずだった。だが、夫の入院は約10カ月間に及び、退院のめどすら立っていない。会話もできなくなった。

 「この国はあなたを助けてくれましたか?」

 その問い掛けに、妻は答えた。「何もしてもらっていません」

   ■   ■

 31日に投開票される衆院選。コロナ禍のこの国は、私たちとどう向き合ってきたのか。現場から考えたい。(中島摩子)

4人に1人が後遺症 長期入院者の実態分からず

 新型コロナウイルスの感染者は、治療や療養が終わっても、体のだるさや呼吸器、精神症状などが長引くケースが目立っている。

 国立国際医療研究センター(東京)は今月上旬、感染者の4人に1人は半年後も後遺症があったと発表した。今春までに感染した457人のうち、26%が半年後、9%が1年後も症状があった。女性の方が倦怠感や味覚・嗅覚障害、脱毛が出やすく、若い人や細身の人は味覚、嗅覚障害が出やすかったという。

 厚生労働省は後遺症に関する研究を進めており、ホームページで公開している診療方針に反映させる方針だ。だが、記事で紹介した男性のようにコロナ治癒後も長期入院している人の実態は分かっていない。

 一方、神戸市は11月から、看護師が後遺症に対応する相談ダイヤルを設置するほか、感染者約5千人にアンケートし、実態把握に努めるという。(井川朋宏)

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