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丹波市の人口政策について話し合う生徒=丹波市春日町、氷上高校
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丹波市の人口政策について話し合う生徒=丹波市春日町、氷上高校
丹波市の人口政策について発表する生徒=丹波市春日町、氷上高校
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丹波市の人口政策について発表する生徒=丹波市春日町、氷上高校
神戸新聞NEXT
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 31日に迫る衆院選の投開票。兵庫県では近年低調な投票率の向上が課題だ。中でも若者の低さは深刻で、2017年の前回衆院選では18歳投票率が37・93%と全国最下位だった。県や市町の選挙管理委員会は啓発に力を入れるとともに、5年前に高校で本格的に始まった「政治的教養を育む教育(主権者教育)」の成果に期待。「将来を選ぶ大切な権利。一票を投じて」と呼び掛けている。

 県内の投票率は1990年代前半まで7割前後で推移。96年に初めて60%を割り込み、2017年の前回衆院選では戦後最低の48・62%にとどまった。

 16年の改正公選法施行で選挙権年齢は18歳以上に引き下げられたが、18、19歳の投票率は16年参院選で44・74%、17年衆院選で32・14%-と低い。

 さらに、総務省の全国抽出調査(都道府県別は非公表)によると、20代も投票率は低迷。17年衆院選を含む直近3回の国政選挙はいずれも30~35%台だった。

 県や市町の選管は高校に出向いて選挙の意義などを説明する授業を毎年100校前後で実施。県選管は今回衆院選に向けても、県内の高校3年生を対象に投票を呼び掛けるちらし約4万5千枚を配った。

 一方で、啓発を繰り返すだけでは投票率向上につながらないのが現状。県選管は「選挙は自分たちで主体的に選ぶもの」とし、高校での主権者教育の効果に期待を寄せる。

    ◇

 「皆さんは丹波市長です。この町の人口を増やす政策を発表してください」

 10月上旬、丹波市春日町の氷上高校。1年3組の地理の授業で吉野哲生教諭(33)が呼び掛けた。

 教壇に立った吉見瑠姫奈(るきな)さん(15)らの班は「子どもが生まれたら5万円給付」などの政策を提案。「子育ての負担軽減で出生数が増える。毎年支給する案も議論したけど、市の財政を考えて1回にした」と班での検討経緯を振り返った。

 吉野教諭は「身近な課題は生徒には自分事。この意識を国や世界に広げてほしい」と願いを口にした。

 高校での主権者教育は、教科の枠を超えて民主主義の担い手としての意識を養う。中立性が求められる学校で政治を扱うことに、初めは多くの教員が悩んだ。

 そこで県教育委員会は「地域の課題」に着目。18年度には但馬の医療や芦屋市の屋外広告物条例など各地の具体的な課題を取り上げた授業事例集を作った。身近な問題をきっかけに国の課題に目を向け、政治的判断力が高まることを目指す。

 当初から地域課題に着目してきた加古川東高校の菊川泰教頭は「政治を縁遠く感じていた生徒も身近な課題には意識が高い。1票で意思を表すことの価値に気付き、政治参加がより身近になる」と話す。

 県立長田高校(神戸市長田区)3年の小原由莉さん(18)は地元の商店街に密着し、市長への提言書作成に関わった。「市政と自分との関係を実感した。投票権は市民が闘争を通してようやくつかんだ権利。候補者の政策を調べ、神戸市長選、衆院選に1票を投じたい」と表情を引き締めた。

 今回衆院選では期日前投票者数が前回の1・5倍に増え、投票率全体に明るい兆しも見える。県選管担当者は「この勢いのまま投票率を上げたい。意思表示をするため投票所に足を運んでほしい」と力を込めた。

(古根川淳也、藤井伸哉)

【社会全体で育成を】

 主権者教育に詳しい橋本康弘・福井大学教育学部教授の話

 主権者として必要な資質は、政治・社会問題を事実に基づいて多面的に検討できること。その育成を学校教育が担うことで、有為な主権者を社会全体で育てることができる。身近な問題を考えることは地域社会の構成員としての基盤になる。その上で政治への関心、意欲を国政につなげていくことが重要だ。

【特集ページ】衆院選2021

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