国内ではなじみが薄い３カ月以上の長期インターンシップ（就業体験）で兵庫県の淡路島に集まる学生が増えつつある。新型コロナウイルス禍でリモート活用が浸透したことや、「密にならずに交流できる」と学生の関心が地方の島や田園地域に向いている状況が背景にあるという。大正大学（東京都）発の事業支援拠点「淡路ラボ」（淡路市志筑）が島内６事業所につないだ１７人が広報や商品開発を学んでいる。（内田世紀）

　「おいしそう」。海を望むテラス席で、スイーツを撮影する女性の声が響く。食品会社の沖物産（同市志筑）に関東、東北からインターンで来た学生３人だ。

　広報部門を持たない同社が、ＰＲ力不足を補おうと受け入れた。学生がカフェや農家を回り、会員制交流サイト（ＳＮＳ）で食材の特色などをアピール。インスタグラムやフェイスブックなどに投稿し、継続的な閲覧者の拡大を目指す。

　弘前大（青森県）２年の今泉紗詠（さえ）さん（２０）は淡路島の環境が気に入ったといい、「飲食店が地元食材を使う意識の高さに驚いた。将来は日本食を世界に広めたい」と考える。

　同社で受け入れを担当する入口武司さんは「社員だと商売の色が強く出る。縛られず、自由にやってもらうのがいい」と話す。

　清酒メーカーの千年一酒造（同市久留麻）でも、関東と関西の男女３人がインターン中だ。瓶詰めやラベル貼りを手伝い、商品開発も提案。１０月１日の「日本酒の日」にはオンラインイベントを企画し、酒蔵や日本酒の魅力を発信した。

　上野山善彦社長は「２０～３０代の客層の開拓につながれば」と期待。大阪商業大３年中山涼花（すずか）さん（２１）＝山口県出身＝は「女性に手に取ってもらえる商品を作りたい。淡路島での経験をいつか故郷のために役立てたい」と意欲をみせる。

　大学生のインターンといえば、国内では企業が採用活動の一環として実施する短期型が一般的。一方、欧米では半年以上の長期が主流で、学生のスキルアップや、したい仕事を探す制度として定着している。

　「淡路ラボ」は２０２０年、大正大地域構想研究所の元専任講師山中昌幸さん（４９）が設立。学生らのアイデアを生かした地域での新事業開発を試みている。長期インターンはその延長で、山中さんが海外の大学を視察した経験を踏まえて採り入れた。学生たちはリモートや夏休みなどの長期休暇を利用したり、休学したりして参加している。

　淡路ラボでも、６人の長期インターン生が情報発信を担う。神戸大２年札場遥登（ふだばはると）さん（２０）は「勉強やサークル活動に期待して入学したが、授業はリモート。仲間ができればとインターンに参加した」と語る。

　「パソコン画面と話をするのにうんざりし、紹介サイトでインターン先を探している学生は多い」と山中さん。「淡路島などのびのび過ごせる地方の人気は高い。今後も受け皿として期待される」と話す。

■島内３市　大学と連携

　リクルートがまとめた「就職白書２０２０」によると、２０２０年春卒業の学生のうちインターンシップを利用したのは６２％で、長期（３カ月以上）に限ると２・９％だった。

　淡路ラボの山中昌幸さんによると、新型コロナウイルス感染拡大後、長期の希望者が増加。企業の関心も高く、コロナ禍で将来に危機感を持つ経営者が「事業アイデアが成功するか、若者にマーケティングしてほしい」と求める声もある。

　自治体も背中を押す。淡路島の３市は地域課題の解決へ大学との連携事業を展開しており、淡路ラボの母体となった大正大は淡路市の協定先の一つ。同市は神戸学院大や地元の関西看護医療大とも連携する。洲本、南あわじ市はそれぞれ龍谷大や吉備国際大などとつながり、学生が入りやすい環境が整いつつある。

　人口減少や少子高齢化が進む地方では、若者が魅力を感じる仕事の創出が求められている。山中さんは「インターンが未来の仕事をつくる場になれば」と期待する。（内田世紀）