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演奏する舘野泉さん。「左手だけではない。体全体で音楽をやっている」と語った=神戸新聞松方ホール(撮影・吉田敦史)
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演奏する舘野泉さん。「左手だけではない。体全体で音楽をやっている」と語った=神戸新聞松方ホール(撮影・吉田敦史)
文化芸術プロデューサー浦久俊彦さん(左)との対談で、ユーモアを交えて音楽への情熱を語った舘野泉さん=神戸新聞松方ホール(撮影・吉田敦史)
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文化芸術プロデューサー浦久俊彦さん(左)との対談で、ユーモアを交えて音楽への情熱を語った舘野泉さん=神戸新聞松方ホール(撮影・吉田敦史)

 一音一音を慈しむように奏でる。2002年に脳出血で倒れて右半身不随となり、2年後に「左手のピアニスト」として復活した舘野泉さん(85)のコンサート「舘野泉~こころの音楽~」(神戸新聞社など主催)が3日、神戸市中央区の神戸新聞松方ホールで開かれた。清らかな風、きらめく光や水を感じさせる音色に、心が洗われるようだった。

 1曲目は700回以上披露してきたバッハ(ブラームス編)「シャコンヌ」。「一回一回を生きたものに」と臨む演奏は、知人の音楽家らから「あなたのバッハはいつも新しい」と評されてきた。この日もすっきりと磨き抜かれた旋律で、聴衆約400人の心をつかんだ。

 大自然を思わせる豊かな表現にも引き込まれた。吉松隆「アイノラ抒情曲集」「タピオラ幻景」(舘野泉に捧ぐ)は、舘野さんが1964年から住むフィンランドの作曲家シベリウスの山荘や神話に登場する森を表した曲。透明感あふれる音色は北欧の澄んだ空気を感じさせるとともにその厳しさも伝えた。山田耕筰(梶谷修編)「赤とんぼ」は、和音展開の中に主旋律を潜ませる編曲。真っ赤な夕焼けの中をとんぼが飛ぶ様子がスローモーションで浮かぶようだった。

 昨年、演奏生活60年を迎え、今月には85歳に、来年1月で倒れてから20年となる。最近は車いすでステージ上を移動するが、力強い演奏は健在。苦難の道のりも、さらりと語り、笑いを誘った。

 「『生きてるんだ』っていう実感は、僕にとっては音」と舘野さん。今、生きている。その歓(よろこ)びに満ちあふれるような調べは、聞く者の背中を優しくなで、そっと励ましてくれる。

 アンコールを含む9曲を弾き終えると、何度もうなずきながらほほえんだ。会場は温かな余韻に包まれた。(小林伸哉)

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