全国で発生した住宅火災のうち、死者数(放火・自殺者を除く)に占める高齢者(65歳以上)の割合が年々増加し、2020年は犠牲者の7割超を占めた。加齢による身体機能低下が逃げ遅れなどに影響しており、全体の死者数が下げ止まる要因になっている。
消防庁の統計によると、20年の住宅火災死者数は899人。06年に新築、11年に全ての住宅で火災警報器の設置が義務付けられたことが奏功し、05年の1220人から3割近く減った。
一方で、15年(914人)以降は900人前後で下げ止まっている。高齢者の死者は645人(20年)で、691人(05年)からさほど減っていない。高齢者の総数が増えていることが背景にあり、20年の死者数に占める高齢者の割合は71・7%と、05年の56・6%から大幅に増えた。
兵庫県内も同様の傾向にあり、19、20年と2年連続で高齢者の占める割合が8割を超えた。
消防庁は今年、高齢者の住宅防火対策を担う外部検討部会の報告書をまとめ、早期の消火や避難を促す「いのちを守る10のポイント」を明示。さらに、消防庁や兵庫県内各自治体の消防は、電池切れや老朽化が懸念される火災警報器の交換や点検を呼び掛ける。
消防行政に詳しい関西大の永田尚三教授は、ホテルや百貨店など不特定多数が利用する「特定防火対象物」の火災予防が中心だった結果、一戸建てへの防火対策が遅れていると指摘する。65歳以上の死亡率の高さを踏まえ、「警報器の有効性は高い。設置状況の把握を急ぎ、取り付け支援などもさらに充実させる必要がある」と話した。(藤井伸哉)
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