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来年に控えた単独無寄港太平洋横断への思いを語る堀江謙一さん=県庁
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来年に控えた単独無寄港太平洋横断への思いを語る堀江謙一さん=県庁

 世界最高齢での単独無寄港太平洋横断に挑む海洋冒険家の堀江謙一さん(83)=兵庫県芦屋市=が30日に開いた会見の主なやり取りは次の通り。

 -航海を前にした今の思いは。

 「59年前(1962年)に西宮からサンフランシスコへの航海を行った。来年は『太平洋ひとりぼっち』から60周年で、きりのいい数字になったが、本当はこの計画は今年やる予定だった。新型コロナウイルスの諸般の事情で1年延びたが、それはそれでよかったと思っている」

 「前回の航海が2008年。それまで3年ペースだったが、家族も『3年ごとは疲れる』ということで休憩していた。100歳までチャレンジャーとしてやりたいと思っているが、100歳になったときに心臓が動いているか分からない。83歳だが元気なので『このチャンスを生かさないと』。結果として60周年になった。ヨットは最初と同じ大きさで、(初代を設計した)故横山晃さんの息子さんに設計をお願いした。『太平洋ひとりぼっち』60周年で全力を挙げて頑張る予定ですので、皆さん応援をよろしくお願いしたいと思います」

 -83歳での挑戦に注目が集まるが、年齢は関係あるのか。

 「年齢は無視したいが、固有名詞をよく忘れるようになり、認知症の始まりがきていると感じる。年齢がいっていることを認めたくないが、認めざるを得ない現実がある」

 -年齢に打ち勝ってチャレンジする気持ちか。

 「『物事はよく考えないといけない』と言われるが、考えているだけで物事が分かったり、前進したりするのか。行動を起こして頭を打つことによって、今まで見えなかった世界が見えてくることがある。単に考えているだけではなく、行動を起こすことが楽しい。いろんな刺激があって、新たな世界を発見できることもあるかと思う」

 -ゴール地点は西宮市。兵庫県や全国の方々にどういうことを伝えたいか。

 「1980年に兵庫県民となり、41年。ヨットの航海そのものは僕自身の自己満足でやっているとはいえ、僕自身が挑戦することによって、挑戦することの素晴らしさを一人でも多くの方に知っていただけたらよりうれしい」

 -地元企業の古野電気に支えられているが、機器の性能もよくなっているのでは。

 「古野さんにはGPS(衛星利用測位システム)などで協力してもらっている。よく、『59年前の航海と比べて便利なものができたので航海しやすいだろう』と言われるが、59年前でも日本から米国に行くのに、GPSがないから米国を通り過ぎるということはなかった。あんな大きなところ、見つけ損なうことはない」

 「来年、マゼランの世界一周(1522年)から500年に当たるが、500年前は世界の海図ができていなかった。正確な海図ができていることはありがたい。先駆者の残してくれたものを使ってやっている。六分儀やGPS、測深機-。どんどん便利になっているが、何か足らない方が楽しいかな、と逆に思う」

 -60年間航海を続けている理由は。

 「僕、やたら不器用なんですよ。何もできない。ヨットは高校の部活でやって、3年間で乗り方を覚えた。ヨットはいいですよ。他のスポーツは、人間が動力源なんです。ヨットはあくまでも操縦。幾つになってもできる。大して力もいらない。動力源は風なんですよね。こんな素晴らしいものは、一度味わったらやめられない」

 「ヨットは単に走るだけでなく、置いていると昼寝したり、友達とお酒を飲んだりと、ミーティングルームになる。外国のヨットクラブも素晴らしくて、会費で運営されているから、レストランを利用してもチップはいらないし、お酒も安い。なぜやるかというよりも、やめたいと思ってもやめられない。それぐらい素晴らしい。皆さんも一度、ヨットハーバーを見てください」

 -航海の間はどのような生活を。

 「一人の生活だが、今の時代は衛星電話や無線、インターネットも使える。家族とホットラインがあるのは安心感がある。ただ、ヨットで衛星電話やネットが使えると言ってもやりにくい。『時々つながらないと、家族に心配かけるなあ』と、余分な気を遣うところもある。それでも一人で航海し、一人で暮らしていると、環境に順応していく。だんだん独り暮らしがよくなってくるんですよね。順応してきて、だんだん快適になる」

 「最初の『太平洋ひとりぼっち』の航海は3カ月かかったが、日本を出発して米国が見えてきた時に思ったのは、食料や水さえあればなんぼでも行けるな、ということ。日にちがたつほど孤独感が募ってくるのではなく、環境に順応して、だんだん慣れてくる。どんどん行けそうな気になってくる」

 -ヨットの上ではどんな食べ物が好きなのか。

 「ガスコンロを積んでいるから、もともとご飯を炊いていた。普通のお米を海水でといでご飯を炊いていた経験もあるが、今はそんなことはしない。調理しなくてできるのが一番いい。手の込んだものはあまりしたくない。今度の航海は半分はシリアル、コーンフレークぐらいが一番いいのかなと思っている。間の時間は本を読むなどして、独り暮らしの良さを満喫したい」

 -高齢社会で、シニア世代へのメッセージは。

 「僕自身、自己満足で航海しているが、チャレンジすることの素晴らしさを伝えることができたらうれしいな、と思っている。年齢を重ねても関係なく」

 -太平洋の上で見たい景色や味わいたい楽しみは。

 「楽しみはいろいろある。前にも一回見たことがあるが、虹が出る。普通は太陽の光線で虹が出るが、月の明かりで出る虹もある。一度見たことがあるが、あれを写真に撮れたらなと期待している」

 「以前は魚釣りをあまりしたことがなかったが、今度は魚も釣ってみたいと思っている。小さいヨットが大きな魚を釣るとどっちが釣ったのか分からんようになるので、適切な大きさがいい。一番簡単に釣れるのはシイラ。手に持って写真を撮りたい。シイラは疑似餌を海に入れると数秒間でパッと食いついてくるからね」

 -今準備していることは。

 「ヨットができて、国際航海をするための許可は下りている。衛星電話を使えるようにして、ロープのハンドリングに慣れること。コンテナ船に積んで出発点のサンフランシスコに送る。船に積み込むと1週間か10日で米国に着くが、それまでの手続きが煩雑。早めにお願いして作業を進めたい。それさえできれば問題ないと思う」

 -1年前から旅を決めていたという話だが、今の気持ちは。

 「コロナの第6波がぶり返して行けなくなったら困ると思っている。僕はたぶん来年も元気だと思うが、あまり延び延びになると気がそがれる。やはり、計画したからには計画通りできるだけ進めたいと願っている。他の要因で行けなくなるのは何とか避けたい」

 -ヨットは西宮市にあるのか。

 「11月29日のお昼ごろ、新西宮ヨットハーバーに着水し、30分ほど走らせた。27日に広島で進水式を終えたが、実際には何週間か前、内緒でテストをしている。ヨットはどんなにちゃんと造っても、まっすぐ浮いているのか心配。海へ浮かべて1、2時間テストしてみた。それを陸に揚げて、27日に進水式をした。ちょっとインチキですけどね」

 -どういったトレーニングをしているのか。

 「僕はトレーニングしない人なんですね。ただヨットはちょっとずつハンドリングが違うので、帆を上げるなど慣れるための練習はする。体を鍛えることはしないが、今度の航海が来年3月に出航して2カ月半かかる。航海がトレーニングにもなっている。ヨットは乗れば乗るほど体の健康にいい。そういう意味では毎日が訓練になっている。1日24時間は8万6400秒で、ヨットは2、3秒に1回ぐらい揺れ、1日何万回か揺れている。乗っている間はストレッチになっている。けがさえしなければ、体のためにはとてもいい。航海中は暴飲暴食もない。本番がトレーニングで、体を鍛えることにもなっている。ぜひ試してみてください」(まとめ・大島光貴)

【リンク】ヨットで太平洋横断の83歳堀江さん 洋上での楽しみは

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