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10月の神戸市長選で初導入された「記号式投票」の投票用紙=神戸市役所
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10月の神戸市長選で初導入された「記号式投票」の投票用紙=神戸市役所
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 ○印を付けるだけで簡単に投票できる「記号式投票」が10月の神戸市長選で兵庫県内で初めて導入されたが、全国的にみれば過去15年で採用する自治体が2割減っている。期日前投票は候補者名を印字した記号式投票用紙の準備が間に合わないため、候補者名を書く「自書式」となり、投票方法が混在してしまう。また、選挙期間が短い町村長選などは準備の負担が大きいことが背景にあるようだ。

■神戸市、きっかけは「米大統領選」

 10月31日の神戸市長選投開票日。候補者名が並ぶ投票用紙を受け取り、○を付けて投票した50代女性は「名前を書くよりよっぽど簡単。字を書くのが難しい障害者や高齢者にも優しくてよいと思う」と歓迎した。

 市選挙管理委員会によると、昨年の米大統領選でマークシートの投票用紙を見た選挙管理委員が「市長選の投票も簡単にできないか」と提案。導入のきっかけになったという。おおむね好評だったとして「今後も続けていく」としている。

 ただ、全国的に神戸市のような例は珍しく、記号式を採用していた自治体が自書式に戻す例が相次ぐ。

 選挙専門の月刊誌「選挙時報」が毎年公表するデータによると、2006年末時点で全国284自治体(特別区を含む)が首長選挙で記号式投票を採用していたが、20年末には約2割減の225自治体に減った=グラフ。全自治体に占める割合も15・1%から12・6%に減っている。

 特に選挙運動期間が5日しかない町村長選は3割減。記号式投票は、告示日に立候補の届け出を締め切ってから投票用紙の印刷を始めるため、準備の時間が限られ、候補者が亡くなった場合など急変に対応しにくい側面もあるとみられる。

 また、期日前投票や不在者投票などは自書式と公選法で定められており、投票方法が混在するのもネックだ。

 国政選挙も自書式と決まっているほか、候補者数が多い議会選挙も記号式の導入は難しい。20年末時点で記号式投票を採用しているのは全国28議会だけで、それも全て候補者の少ない補欠選。神戸市も市議選に適用する予定はないという。(長谷部崇)

■疑問票や無効票は減、事務負担は大

 ○印を付けるだけの「記号式投票」は高齢者や障害者ら投票弱者にとってのメリットは大きい。しかし、選挙管理委員会の事務作業負担は重くなり、廃止した各地の選管は「徹夜の作業だった」「期日前投票の自書式と混在し、有権者が混乱した」と問題点を指摘する。

 長野県小布施町(おぶせまち)は1964年に条例を制定し、町長選を記号式投票としたが、昨年条例を廃止した。町選管の担当者は「投票用紙を印刷する時間が限られ、徹夜の作業だったと聞いている」と話す。

 2018年に自書式に戻した広島県安芸高田市選管も「全て記号式に統一できればよいが、期日前投票などで自書式の投票用紙も準備する必要があり、選挙事務の負担が増す」と説明。14年に記号式をやめた山口県宇部市選管や、昨年やめた長野県飯田市選管も「ほかの選挙は全て自書式なのに、市長選だけ記号式を残すと有権者が混乱する」と話す。

 10月の市長選で記号式投票を導入した神戸市選管は「有権者にはおおむね好意的に受け止められた」とする一方、期日前投票に訪れた有権者から「記号式じゃないの?」という声もあったという。同市北区の開票所では、市長選で当日と期日前の2種類の投票用紙を分けて作業したため、手間取って開票が遅れる要因になった。

 市選管は市議選への適用は予定していない。例えば19年の神戸市議選は東灘区で17人、垂水区と西区で各15人が立候補したが、この人数を一覧で並べるには投票用紙を大きくするか、フォントを小さくする必要がある。投票用紙を大きくすれば開票時に使う自動分類機に入らなくなり、フォントを小さくすれば読み取りづらくなってしまう。

 記号式投票には疑問票や無効票が減るといった利点もある。同市長選の無効票の割合は3・3%にとどまり、前回(4・2%)に比べて改善された。(長谷部崇)

■選挙制度のあり方に一石

【一般社団法人「選挙制度実務研究会」(東京)の小島勇人代表理事の話】記号式投票は「投票弱者」に優しい制度のはずなのに、投票所まで行けない入院患者や高齢者施設の入所者は自書式の不在者投票を利用せざるを得ない。自書式との二重構造は有権者にとって分かりづらく、選挙事務も煩雑になるなど使いづらい面があり、全国に広がらないまま衰退している印象だ。電子投票やその先のインターネット投票を議論する時期に来ており、神戸市が記号式を採用したことは選挙制度のあり方に一石を投じたと言えるのではないか。

【記号式投票】海外では一般的な投票方法。日本では、1962年と70年の公選法の一部改正で、地方自治体の首長選挙と議会選挙で採用できるようになった。首長選で採用する自治体が多いのは都道府県別に、熊本県(45自治体)▽岩手県(30自治体)▽長野県(26自治体)▽青森県(23自治体)▽福岡県(21自治体)-など(2020年末時点)。期日前投票、不在者投票、点字投票は対象外。兵庫県内では西宮市も来年3月の市長選と市議補選から採用する。

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