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神戸大病院国際がん医療・研究センター(奥)とメディカロイドの入るビル(右手前)、遠隔手術の実証実験などを行う施設(左手前)が近接する医療産業都市の一角=2020年8月、神戸・ポートアイランド
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神戸大病院国際がん医療・研究センター(奥)とメディカロイドの入るビル(右手前)、遠隔手術の実証実験などを行う施設(左手前)が近接する医療産業都市の一角=2020年8月、神戸・ポートアイランド

 神戸大病院(神戸市中央区)が新たに、尿路などの内視鏡手術を支援するロボットの開発に向けて検討を始めた。同病院が企業と共同開発した国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」は、14日で初手術から1年を迎える。これまでに蓄積したノウハウを投入し、次世代の医療機器開発をリードする大学としての地位確立を目指す。

 同病院教授でもある藤澤正人・神戸大学長が明らかにした。同学長によると、開発を検討している内視鏡ロボットは、腹部を切開することなく、カメラがついた極細のファイバーを尿路などに入れて治療することを目指す。既に医師ら数人で検討チームを立ち上げたほか、神戸・ポートアイランドの同病院国際がん医療・研究センターを開発の実証・研究拠点とし、施設を充実させる改修計画も進めているという。

 ヒノトリは腹部に小さな穴を開け、カメラや手術器具を入れてロボットで操る。正確で細かい治療ができるのが特長で、同大学では、この1年間に24例の前立腺がん手術の実績を重ねてきた。

 一方、内視鏡は肺、大腸や尿路の治療などに用いられるが、医師が手探りで差し込んでいるのが実情で、人体の細い管の粘膜を傷つけないよう動かすには熟練の技が必要となる。長時間厳しい姿勢で扱うため、疲労感も大きいという。

 ロボットによる手術支援が実現すれば、座ってモニターを見ながらコントローラーで動かせ、医師の負担は格段に抑えられる。また、安全性や操作性を向上させる装置を用いれば、直径数ミリの管の中でも、精密な治療を安心して行えるようになる。操作はデジタルで記録できるので、熟練医の技術を若手に伝えるなど教育面でも役に立つ。

 内視鏡ロボの開発は海外で先行し、既に稼働しているものもあり、日本は遅れているという。ただ、実用化には長期にわたる検証を要し、関係各所の協力や巨額の資金も欠かせない。検討チームは今後、医療現場のニーズや企業の意見を聞くなどし、費用対効果や実現可能性を探るとしている。

■県内企業と連携「国産医療機器の中心に」

 手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」は、川崎重工業とシスメックスが共同出資して設立された医療用ロボットメーカー「メディカロイド」(神戸市中央区)が、神戸大学の藤澤正人学長らと共同で開発。昨年12月14日に藤澤学長自らが執刀して初手術を成功させた。

 これまで手術支援ロボは、米国製「ダビンチ」の独壇場だったが、藤澤学長によると、ヒノトリは少なくとも国内7病院に導入され、さらに広がる見込みという。現在は第5世代(5G)移動通信システムを活用した遠隔手術に向けた研究も進める。開発現場が日本国内にある強みや、価格面での期待も大きい。

 国内の医療機器開発は、特に事故のリスクが伴う治療系において、海外メーカーに後れを取ってきた。神戸大は医学と工学を融合した新専攻を2023年に設置する計画を発表しており、需要にマッチした医療機器を開発できる人材育成にも努める。

 藤澤学長は「今後の医療は、患者の体の負担を抑える低侵襲という流れと、ロボットや遠隔治療を可能にするデジタルという流れの2本柱だ。両者を兼ねる内視鏡ロボを開発し、医療機器開発のメッカとなるよう、神戸・医療産業都市を神戸大学がけん引していきたい」と話している。(霍見真一郎)

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