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車いすの利用客の乗降介助を練習する神戸市営地下鉄の職員=神戸市営地下鉄三宮駅
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車いすの利用客の乗降介助を練習する神戸市営地下鉄の職員=神戸市営地下鉄三宮駅

 車いす利用者らの電車への乗降を伝える駅員のアナウンスを悪用した痴漢やつきまとい事件を受け、アナウンスを取りやめる鉄道事業者が相次ぐ中、視覚障害がある40代の女性から、神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」にこんな投稿が寄せられた。「私も車いすを使いますが、アナウンスがなくなって不安です。他の方はどう思っているのでしょうか」

 このアナウンスは、駅員の介助を受けて乗降する車いす利用者や視覚障害者の存在を車掌に伝え、ドアに挟まれないようにするなどの目的がある。号車番号や降車駅を伝える場合もある。だが、放送によって障害者の存在が知られ、車内で痴漢やストーカーなどの迷惑行為が相次いでいることが障害者団体の調査で明らかになり、国土交通省が7月、全国の鉄道事業者に見直しを求めた。

 投稿を寄せた女性が利用する神戸市営地下鉄は、国交省の要請を受けてアナウンスを取りやめた。女性は「視覚障害者には(降車駅のホームに)駅員が来てくれているかどうかが見えない。今までは(乗車時の)アナウンスで確認していたのに」と不安を募らせる。

 この投稿について、車いす利用者に意見を聞いた。神戸市兵庫区の女性(53)は「アナウンスはプライバシーの侵害。私たちが十数年前から『やめてほしい』と訴えていたことが、ようやく実現した」とアナウンスの弊害を強調する。

 別の女性は「障害の種類や人によって、サポートしてもらいたいところが異なる。今回のケースでも、視覚障害者が乗降車時に不安にならないよう駅員が声かけをすればいいのではないか」と話した。

 神戸市交通局は「これまでは、アナウンスに頼っていた面があったかもしれない。係員による丁寧な声かけを徹底していきたい」としている。

 一方で、車いす利用者からは「そもそも介助なしで、単独で乗り降りできるように駅を整備すべきだ」との指摘もある。神戸市営地下鉄では、2023年度までの西神・山手線、北神線全駅のホームドア設置工事に伴い、段差や隙間を極力減らす工事を順次実施していく方針という。

 ただ、鉄道事業者によってはバリアフリー整備とともに無人化を図る動きもあり、神戸市視覚障害者福祉協会の福井照久会長(67)は「いくらバリアフリーが進んでも、サポートが必要な人はいる。駅員がいる窓口を明確にし、ソフト面のサポートも両立してもらいたい」と話している。

 兵庫県内を運行する鉄道事業者では、阪神電鉄や阪急電鉄は以前からアナウンスをせずに対応。JR西日本は、神戸線など列車の編成が長いエリアに限り、乗車車両や降車駅名を出さず、安全確認のアナウンスを続けている。(石沢菜々子)

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 神戸新聞社は、読者の投稿や情報提供を基に取材を進める双方向型報道「スクープラボ」に取り組んでいます。身近な疑問や困りごとから、自治体や企業の不正告発まで、あなたの「調べてほしい」ことをお寄せください。LINEで友だち登録(無料)するか、ツイッターのダイレクトメッセージで投稿できます。皆さんと一緒に「スクープ」を生み出す場。ご参加をお待ちしています。

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