クリスマスを目前にし、街にはクリスマスソングが流れ、美しいイルミネーションが輝く。だが、新型コロナウイルス禍が招いた船のコンテナ不足や原油高、世界的な需要拡大による原材料の高騰などが直撃。洋菓子店から悲鳴が上がり、聖夜を彩るイルミネーションイベントは、薄氷を踏むような開催危機にさらされた。(広畑千春)
「どれもこれも値上がりしている」。阪神芦屋駅前の人気洋菓子店「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」店長の伊東巌さん(44)はため息をつく。今季、ケーキの値上げに踏み切った。
原油価格の高騰でハウス栽培の経費がかさみ、イチゴの仕入れ価格は1キロあたり100円ほど値上がりした。バターやアーモンドなど輸入に頼る材料は、中国での消費の伸びなどを受け年々値段が上昇し、「バニラに至っては、この10年で20倍になった」とその高騰ぶりを嘆く。
さらに今年に入って砂糖や小麦粉も値上げが続き、中国製の接着剤を使う包装用フィルムの価格も10月から4割近く高くなった。
「メーカーも問屋も小売りも厳しい。洋菓子店の利益率は元々低く、企業努力で補えるレベルはとっくに超えている。お客さまに正直に状況を伝えようと思った」。伊東さんはホームページで価格改定のお知らせに併せ、ケーキ業界が置かれている状況を詳細に説明した。
顧客からは納得する声も多く寄せられ、クリスマスケーキの予約は完売。12月に値上げした焼き菓子の売り上げも落ちていないという。「値上げ分も満足してもらえる商品をお届けできるよう努力していきたい」と引き締める。
クリスマスムードを演出するイルミネーションも、世界的なコンテナ不足のあおりを受ける。神戸市北区の道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢の「神戸イルミナージュ」は約500万個の発光ダイオード(LED)電球で埋め尽くす。11年目の今年はピンクのお城や星形の巨大迷路も登場したが、米国などからの輸入資材が全てそろったのは開催1週間前だった。
「完成していても送れず、日本に着いても3日間、港で足止め。何とか間に合ったがコンテナ代は昨年の倍以上。原油高で電気代もどれぐらい上がるか…」と主催する一般社団法人日本イルミネーション協会(大阪市)の担当者。
東日本大震災後、「希望の光を神戸から」という思いで始まったイベント。「簡単になくせない」といい、クリスマスイブの24日は午後10時まで点灯時間を延長する。
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