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人工砂浜が陥没した現場で手を合わせる元兵庫県警捜査1課員の前田範子さん=12日、明石市大蔵海岸通1(撮影・松本寿美子)
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人工砂浜が陥没した現場で手を合わせる元兵庫県警捜査1課員の前田範子さん=12日、明石市大蔵海岸通1(撮影・松本寿美子)
金月美帆ちゃん
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金月美帆ちゃん

 2001年12月に兵庫県明石市の大蔵海岸で陥没した人工砂浜に埋もれ、金月美帆(きんげつみほ)ちゃん=死亡当時(5)=が亡くなった事故は、30日で発生から丸20年となる。母親らの調書を取った兵庫県警捜査1課の元捜査員、前田範子さん(62)=大阪府吹田市=は今も、美帆ちゃんの命日に遺族に宛てて贈り物を届けている。今月、事故現場を訪れた前田さん。「今ごろ、すてきな女性になっているはず」。亡き姿を思い、色鮮やかな花束をそっと手向けた。(小西隆久、松本寿美子)

 前田さんは1977年、県警交通巡視員に採用され、95年の阪神・淡路大震災に伴い警察官になった。99年春、捜査1課に配属。陥没事故は、前田さんが所属する係が業務上過失致死事件として捜査に当たり、前田さんは被害者対策と遺族の調書を担当した。

 やつれきった祖母や美帆ちゃんの母、路子さん(52)に質問を重ねた。冷静に答えていた路子さんがただ一度、両目に涙を浮かべ「恋愛とかいろんな経験をさせたかった」と声を絞り出した。わが子を失った悔しさが詰まった言葉を、そのまま調書に書き記した。

 提出した調書を読んだ担当検事は「この事件は絶対に起訴するで」と言ってくれたという。少しでも遺族の無念を晴らしたい-。その一心で仕事に突き進んだ。

 命日に物を贈り始めたのは、業務の一環だった。前田さんが異動で同課を離れても、上司から「今年も頼むで」と指示された。その上司は退職したが、「警察の事情でやめるのは違う」と続けてきた。

 当初はジュースの詰め合わせだった。まだ幼い美帆ちゃんのきょうだいが念頭にあり、「遺族に余計な気は使わせたくない」と高価な品物は避けた。

 16年9月、定年まで2年余りを残して早期退職した。初めて東京に金月さんの自宅を訪ねた。美帆ちゃんの仏前で手を合わせ、「海岸で遊ぶ子どもたちをいつも守ってくれてありがとう」と心の中で語りかけた。

 成人を迎えていたはずの年の暮れには「大人になった美帆ちゃんと飲んでほしい」とワインを送った。

 事件を検察に最終送検した日は忘れられない。「やっと捜査が終わった」と全身のこわばりが少し緩んだ。捜査に約2年3カ月を要したが、催促めいた言葉を口にしなかった遺族には「私たちに任せてもらっているという信頼に、背中を押してもらった。感謝しかない」。

 今春、前田さんの携帯電話に写真が届いた。新しい制服に身を包んだ美帆ちゃんのきょうだいが写っていた。送信した路子さんは「発生当時から全てを知ってくれている前田さんから毎年、励まされたことが大きな支えだった」と感謝する。一方の前田さんは「なぜ贈り物を続けるのかはよく分からない。何かが心の中に引っかかっているからだと思う」と話す。

 あれから20年がたとうとする今月12日、退職後では初めて、6年ぶりに大蔵海岸を歩いた。家族連れの楽しげな笑い声を背中に感じながら、美帆ちゃんを模したブロンズ像の前にバラやガーベラの花束を置き、また声をかけた。「私が生きている限り続けるね」

【明石・砂浜陥没事故】2001年12月30日、明石市の大蔵海岸で会社員金月一彦さん(54)と、長女の美帆ちゃん=当時(4)=が散歩中、人工砂浜が約2メートル陥没。美帆ちゃんが埋まり、翌02年5月26日、入院先の病院で死亡した。事故当時の国土交通省と明石市の管理担当者4人が業務上過失致死罪に問われ、14年7月に有罪が確定した。

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