総合 総合 sougou

  • 印刷
黒色の外観が目を引く大阪中之島美術館=大阪市北区中之島4
拡大
黒色の外観が目を引く大阪中之島美術館=大阪市北区中之島4
大阪中之島美術館に広がる吹き抜けの空間=大阪市北区中之島4
拡大
大阪中之島美術館に広がる吹き抜けの空間=大阪市北区中之島4
大阪中之島美術館にかける思いと魅力を語った菅谷富夫館長
拡大
大阪中之島美術館にかける思いと魅力を語った菅谷富夫館長

 新美術館の構想発表から40年近くの時が流れた。「ほんまにできるんかいな…」。関西の美術ファンが、ぼやきながら、待ちわびた夢がかなう。いよいよ2月2日、大阪中之島美術館が大阪市北区の中之島エリアでオープンする。約30年間、準備に関わってきた菅谷富夫館長(63)は「心に深く残る体験をしてほしい」と語る。(小林伸哉)

 新美術館が大阪市制100周年記念事業基本構想の一つに挙げられたのは1983年。バブル景気で沸く90年に準備室ができた。それから、市の財政は悪化し、文化施設の在り方を問う議論も起こり、計画が何度も見直されて今に至る。

 しかし、長い準備期間があってこそ、コレクションは約6千点超にまで育った。芦屋に邸宅を構えた実業家山本發次郎(はつじろう)(1887~1951年)のコレクションは、洋画家佐伯祐三の絵画、白隠ら高僧の墨蹟、アジアの染織品など574件から成る。83年に遺族から大阪市に寄贈され、美術館構想の原点になった。

 近現代の西洋美術は「各作家の代表作を集められたのが大きい」と菅谷さん。モディリアーニの裸婦像のほか、キスリング、キリコ、ダリ、マグリット、ブランクーシ、ジャコメッティらの傑作がそろう。国内外の美術館から依頼され、貸し出される機会は多い。

 コレクション全体の購入・受贈時の評価総額は約265億円と高額だ。ただ、西洋美術で収蔵品と同じ作家と制作年代の作品は近年、数十倍の値が付くほど高騰し、その多くが各美術館に収蔵済み。大阪中之島美術館では、平成初期に買った20世紀の名品が多く、菅谷さんは「今では購入できない。収集できた最後の時期だった」と振り返る。

 兵庫とのつながりにも注目したい。阪神間を拠点として1954~72年に活動した前衛美術集団「具体美術協会」のリーダーで、芦屋で暮らした吉原治良や会員らの作品、旧蔵資料が豊富に収蔵されており、研究への活用も期待される。

 大阪の作家では小出楢重や北野恒富、木谷千種、島成園らの名品がそろうほか、19世紀以降のデザインの流れも家具などで示す。

     ◇

 黒い外観の建物は、水辺のビル群の中にあって異彩を放つ。建築家遠藤克彦さんが設計した。屋内に人々が行き交う「パッサージュ」を配して、居心地のいい空間に仕上げた。

 中之島の街の回遊性を意識して、レストランやショップなどがある1、2階は無料で開く。最上の5階まで吹き抜け空間の複雑な造形が美しく、上層階からは東西南北の眺望を楽しめる。展示室は4~5階に計約3100平方メートル。5階の天井高は6メートルあり、館内はゆったりとしている。

 「美術を見ることは『体験』です」と菅谷さん。「誰とどんな状況で見たのか。個人的な思い出と作品が結びついて、好きになる。楽しいものと出合う。そんな体験をこの美術館でしてほしい」と呼び掛ける。

 観賞体験の「余韻」を大切にして「心に深く届けたい」。だから、展示室から続く階段は緩やかに歩きやすくした。作品の世界にひたったまま、語らったり、思いを巡らせたりする場にしたかった。菅谷さんは当初案の見直しを提案し、理想の形を追い求めた。

     ◇

 オープニングを飾る「Hello! Super Collection 超コレクション展 -99のものがたり-」(2月2日~3月21日)では、収蔵品から厳選した約400点を紹介。開館記念特別展「モディリアーニ-愛と創作に捧げた35年-」(4月9日~7月18日)は、国内で14年ぶりの回顧展となる。

 具体美術協会の新たな魅力を示す「すべて未知の世界へ-GUTAI 分化と統合」(10月22日~2023年1月9日)は、隣接する国立国際美術館と合同で開く。22年度には芸術家岡本太郎の大回顧展や都市「大阪」がテーマの展覧会も予定する。

 大阪中之島美術館TEL06・6479・0550

総合の最新
もっと見る
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ