新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るい、社会機能の維持に欠かせない「エッセンシャルワーカー」の人手不足が懸念される中、兵庫県内で、治安維持や犯罪捜査を担う警察官の感染が目立ち始めている。繁華街が近いなど感染リスクが高い署では陽性者が増え、県警本部からの応援を充てて対応。「執行力を落とさない」を使命感に、県警は対策徹底に神経をとがらせる。
生田署(神戸市中央区)では今年に入り13人の感染が判明。クラスター(感染者集団)と認定された。
最初に感染が分かったのは、同署すぐ南の「生田前交番」で1月8日に勤務していた署員。不拘束で事情を聴いたけんかの関係者の感染が分かったため、PCR検査を受けた。同僚らも検査を受けた結果、次々と陽性が確認された。
同交番は居酒屋やスナック、バーなどが並ぶ東門街の入り口にあり、県内最大の飲み屋街を管轄。口論、殴り合いのけんか、酔っぱらいの保護…。事件は絶えない。
ある署員はマスクなしの酔った男を保護する際に暴れられたため、公務執行妨害容疑で取り押さえた後、感染が判明。同署の感染者13人の大半が生田前交番で勤務していたという。
いずれも確かな感染経路は分からないが、正木博文副署長は「ほかの交番より酔客の対応が圧倒的に多い」と業務上のリスクの高さを指摘。「マスクなしや大声の人、詰め寄ってくる人も多い。仲裁、制止する場も多く、対策はとても難しい」と悩みを口にする。
一方で、三宮近辺は昨年の第5波収束後、人出が著しく増加。同交番の対応が必要な110番も増え、年明け以降は平均1日40~50件、多い日は70件に上る。
生田署の職場離脱者は、保健所の判断と別に同署が自宅待機とした署員を含め一時最大約30人に上った。同交番の欠員に直轄警ら隊や地域課のパトカー勤務員を充て、パトカー勤務は県警本部から応援で補った。
業務中の行動にも細心の注意を払う。生田前交番での勤務時は、酔客対応時の飛沫対策用にゴーグルを常備。署内では、食事は黙食か1人ずつ交代▽仮眠時は各自タオルを持参して枕に巻く▽同じ課や係で固まらないよう業務スペースを分散▽1日5回の消毒-などを実践する。同署は「署内の対策は徹底している。何かあれば来庁をためらわないでほしい」とする。
神戸市内の別の署では昨夏、自宅療養者や宿泊療養者の安否確認に追われ、署員が除染作業などで使う防護服を着たことがある。
第6波でも自宅療養者らは増えている。この署の幹部は「感染リスクの高い低いで状況を選べない。急も要するし、万全はないのが実情。できる最大限の対策で臨むしかない」と話した。(井上太郎)
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