新型コロナウイルスの感染第6波の中心は30代以下だったが、時間がたつにつれて高齢者にも感染が広がりつつある。兵庫県内では1月以降、70代以上の感染者が既に3千人を超え、感染者全年代に占める割合も増加傾向だ。オミクロン株は従来に比べて重症化しにくいと言われるが、軽症でも介護サービスが受けられず、生活もままならない高齢者が出始めている。
神戸市内の80代男性は認知症があり、独り暮らし。ケアマネジャーが付き添って受診したクリニックで1月21日、感染が分かった。
症状は微熱とのどの痛み程度だが、男性は毎日、送迎によるデイサービスを利用し、そこで食事や入浴を済ませていた。医師は「コロナの症状は軽いが、介護サービスが受けられなくなると生活が成り立たない」と判断。「要入院」として保健所に報告した。
だが、保健所は「症状が軽いので入院はできない」とし、ケアマネは新たに訪問看護を手配したが、1日1回の訪問では十分な食事や入浴ができなくなった。数日後には床ずれができ、自宅もごみだらけに。ケアマネが再度、保健所に掛け合ったことで、26日に入院することができた。
◇
県内の70代以上の感染者は19日以降、毎日100人以上が確認され、30日には408人にも上っている。感染者全年代に占める70代以上の割合も日を追うごとに増加し、30日は9・2%にまで高まった。
介護施設の他、家族から感染するケースも増えている。さらに感染が広がれば、軽症であっても、生活できない高齢者が自宅に放置されかねない。
神戸市健康企画課の担当者は「これまでの感染拡大時にも、感染で介護サービスを受けられなくなる問題があった」とし、「症状とともに介護が必要な程度などを総合的に判断する必要があるが、保健所業務が逼迫する中で、なかなか早期の対応が難しい」とする。
発熱外来を設けている東神戸診療所(神戸市中央区)でも1月中旬から患者が急増し、1週間後からは高齢者が増え始めたという。同診療所の郷地秀夫医師は「現状では介護目的の入院はできず、医療が逼迫すれば、軽症の高齢者はますます行き場を失い、症状が悪化しかねない」と懸念する。
その上で、郷地医師は「必要なのは生活援助。介護目的のコロナ病棟を早急に整備する必要がある」と訴える。(木村信行、高田康夫)
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