大好きな「甲子園のおばちゃん」のように、明るく、きれいな花をたむけた。兵庫県西宮市の西宮震災記念碑公園を訪れた同市の看護師、平井桜子さん(29)は午前5時46分、阪神・淡路大震災で亡くなった伯母の木下●子さん=当時(53)=夫妻に、祈りをささげた。
※●は「しんにょう」に「西」、読み方は「みち」
震災時、木下さんと夫の己義さん=当時(58)=は市内で薬局を営んでいたと平井さんは聞いている。2人はJR甲子園口駅付近のマンションで亡くなった。
平井さんは当時2歳。同県豊岡市で生まれ育ち、伯母の記憶はほとんどない。でも家族から、子どもがいなかった伯母は平井さんをとてもかわいがってくれたと聞いた。亡くなっても「甲子園のおばちゃん」と慕われる人柄に、平井さんは「こういう人になりたい」と、憧れに似た感情を抱くようになった。
大学を出る時、西宮で職を探したのは、「おばちゃんに呼ばれているような気がしたから」。以来、毎年1月17日に西宮震災記念碑公園を訪れ、今年で7回目。来るたびに思いは募る。
数年前、実家で●子さんの写真をスマートフォンに取り込んだ。腕には生まれて間もない平井さんが抱かれている。ふと見ると、優しい表情に見守られているような気持ちになる。
新型コロナウイルス禍で仕事は大変だが、今年も「おばちゃんのおかげで西宮でたくさんの人と出会えた。楽しい毎日を送れているよ」と感謝を伝えた。でも-。「最近、宝塚歌劇のファンになったよ。一緒に見にいけたらよかったのにね」。それがさびしい。(大盛周平)
【特集ページ】阪神・淡路大震災









