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但馬牛の母牛にエコフィードの酒かすを与える綿田けんさん=豊岡市宮井
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但馬牛の母牛にエコフィードの酒かすを与える綿田けんさん=豊岡市宮井
日本酒のもろみを搾って酒と分離された酒かす=兵庫県香美町香住区小原、香住鶴
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日本酒のもろみを搾って酒と分離された酒かす=兵庫県香美町香住区小原、香住鶴
日本酒のもろみを搾って酒と分離された酒かす=兵庫県香美町香住区小原、香住鶴
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日本酒のもろみを搾って酒と分離された酒かす=兵庫県香美町香住区小原、香住鶴

 人気ブランド「神戸ビーフ」になる但馬牛の繁殖農家(兵庫県豊岡市)が、食品の製造過程で生じる残りかすを使った飼料「エコフィード」で母牛を育てている。地元の老舗酒造会社の酒かすに加え、おからやしょうゆかすなど種類を多くして栄養面に配慮。地域での飼料自給率が高まり、コストも安く済むという。但馬牛の一大産地で、環境に配慮した循環型畜産の確立を目指す。(金海隆至)

 コウノトリが時折、近くに舞い降りてくる同市内の牧場「こうのとり風土セントラルファーム」。経営者の綿田けんさん(52)が、酒かすを台車に積んで牛舎に入ると、40頭ほどの母牛が両側の柵から一斉に顔を突き出した。

 「酒かすのときはアルコールの匂いのせいか、他の飼料と反応が違う。いつもぺろりと平らげる」と綿田さんは笑う。エコフィードを母牛に与えるのは、子牛の出産に向けて体を大きくし、十分な栄養を取ってもらうためだ。

 2005年、30代半ばで父の後を継ぎ、畜産家となった。当初から低コストの経営を志し、市内の円山川の河川敷で育てた牧草のほか、地域の食品メーカーなどから無償で譲り受けたおからやしょうゆかす、古米、米ぬかなどを活用。5、6種類のエコフィードをそろえている。

 酒かすは当初、愛知県のエコフィード製造販売会社から購入していたが、16年以降、老舗酒造会社の香住鶴(兵庫県香美町)に依頼し年間約4トンを調達。香住鶴にとっても、近年需要が減少する副産物の販売先を確保でき、産業廃棄物として処分する際に必要な費用を削減できた。

 アルコール分約8%の酒かすは、常温でも腐りにくくて扱いやすく、日本酒のもろみを搾って濃縮された酵母やこうじ菌が、牛の腸内環境を改善するという。牛舎に赴いた同社の福本和広専務(37)は「牛の毛づやが良くなり乳量も増えたようだ。ふん尿の臭いも随分少なく感じた」と驚く。

 畜産関係者によると、トウモロコシなどの穀物を中心とした外国産飼料に比べ、エコフィードは購入費を低減できる。ただ、水分量が多く、保存や管理に手間がかかる上、肉牛を育てる肥育農家にとっては、栄養価や供給量にばらつきがあることが難点とされる。

 それでも「地域で集まる資源を活用して牛を飼育することが、付加価値にもなる」と綿田さん。牧場近くの自社店舗で、子牛を産んだ母牛「経産牛」の肉を「風土ビーフ」と名付けて販売し、好評を呼ぶ。

 今春、県立但馬農業高校(養父市)を卒業した若者を初めて正社員として雇用する。綿田さんは「持続可能な畜産を一緒につくり上げ、共感してもらえる人を増やしたい」と話す。

■飼料自給率アップへ国も推奨

 農林水産省は、外国産の輸入飼料に過度に依存することなく、国産飼料を使った畜産経営の普及に向け、飼料自給率のアップを目指している。その手段の一つとして「エコフィード」の生産と利用を推奨する。

 同省によると、畜産の飼料自給率は2019年度で25%。牧草などの「粗飼料」は77%と高いが、タンパク質などを含む栄養価の高い「濃厚飼料」は12%にとどまるという。30年度には全体の飼料自給率を34%に引き上げる目標を掲げる。

 気になるのが、エコフィードが畜産物の品質に与える影響だ。兵庫県立農林水産技術総合センター(加西市)の研究では、パンや麺のくずを加工した飼料で豚を育てると、霜降りの量が2倍以上に増加。こうした飼料を使った県産ブランド豚肉の生産が始まり、「ひょうご雪姫ポーク」と商標登録された例がある。

 ただ、但馬牛については、県立北部農業技術センター(朝来市)によると、米ぬかや米粉などを既存の濃厚飼料に加えて肉用牛を育て、枝肉や霜降りなどの成分を調査したが、効果は認められなかったという。

 同センターの研究員は「エコフィードの活用は発想自体が面白く、食品ロスの削減は期待できる。神戸ビーフや但馬ビーフのおいしさを追求する畜産農家にも、無理のない形で使ってもらえたら」と話している。

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