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4日、姫路市の兵庫県立武道館で行われた甲南大の入試(甲南大提供)
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4日、姫路市の兵庫県立武道館で行われた甲南大の入試(甲南大提供)
神戸新聞NEXT
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 私立大学が地方受験に力を入れている。関西、関東の有名私大23校を調べたところ、大半の大学が全国に試験会場を設け、受験生を呼び込んでいた。受験できる都市数は、近畿大(大阪府東大阪市)が33都市でトップ。総じて関西の私大が熱心で、「西高東低」の傾向が明らかになった。実施校に、地方受験の狙いを聞いた。

 関西、関東の有名私大の入試要項を基に取材した。自校のキャンパスは地方受験の会場と捉えず、付属高校など系列校での試験は会場として数えた。

 調査の結果、関西の「関関同立」(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)と「産近甲龍」(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)の8大学は地方受験に注力しており、実施都市数は軒並み2桁を超えた。

 関東の15大学を含めて、地方受験都市数が最も多かったのは近畿大で、33都市、56会場だった。2位は立命館大(29都市、51会場)、3位が関西大(27都市、31会場)と続いた。

◆志願者日本一の近大「利便性が第一」  

 2021年度まで8年連続志願者数日本一の近畿大は、兵庫県では豊岡市など若年層が多くない地域や、大半の大学が未進出の高知、沖縄県にも試験会場を置く。1967(昭和42)年度には先進的に、東京、金沢、広島、高松、福岡、鹿児島の6都市で行っており、担当者は「利便性が向上すれば、受けてもらえる。市場調査でニーズを見極め、掘り起こしてきた」と胸を張る。

◆立命大は戦前から 「多様性を重視」  

 2位の立命館大は、立命館日満高等工科学校時代の39(昭和14)年に地方受験を行った記録が残っている。立命館大専門学部工学科に昇格した42(同17)年にも京都のほか東京、福岡で試験を行ったとされる。

 長年、地方受験に取り組んできた結果、立命館大は在校生の半分が近畿圏外出身者で占められ、私大ではトップクラスの多様な地域性を誇るという。担当者は「いろんな地域の人と学び合う多様性を大事にしてきた」と話す。

◆首都圏難関校「高飛車ではないが」 

 首都圏難関校の「早慶上智」(早稲田大、慶応大、上智大)は地方受験を行っておらず、早稲田大は「キャンパスの雰囲気を見て感じてほしい」と説明した。

 一方、上智大の担当者は「受けたきゃ来い、と高飛車に構えているわけでない」と強調する。1995年の阪神・淡路大震災以降、近畿圏の志願者は減り続け、現在は首都圏1都3県の学生が8割を占める。担当者は「地方受験がそれほど求められていないのではないか」と推し量る。

 このほか日本最多の学生数を誇る日本大も15都市、17会場にとどまり、関西勢ほど積極的ではなかった。

◆18歳人口少ない関西「取れる中で取る」 

 関西ではほぼすべての有名大学が90年代までに地方受験を導入し、関東の大学に先行した。近畿大の担当者は「首都圏は18歳人口が多いが、関西はマーケットが小さく、国公立を第1志望にする生徒も多い。少子化が進む中、『取れる中で取っていこう』と関西の大学同士の競争が激しくなった」と説明する。また、関西大の担当者は「高校を回っていて、(ライバル校が)その県で地方受験やるんです、と言われたら意識をするところはある」と認める。関西の私大の危機感とライバル意識が地方受験を広げてきたようだ。

     ◇     ◇

■関学、甲南大 兵庫県内細やかに

 地方受験の充実ぶりを競い合う関西で、兵庫県に拠点を置く関西学院大(西宮市)と甲南大(神戸市東灘区)も力を注ぐ。関学大は2021年度、初めて姫路市に会場を構えた。既に立命館大、関西大は姫路市で試験を行っており、追随した格好だ。

 甲南大は08年度から姫路市で入試を開始。関学大、甲南大とも姫路から日帰りできる距離だが、甲南大は「兵庫県西部の志願者が多く、移動の負担が軽減される」。関学大も「姫路エリアの受験生はこれまでは岡山か、西宮の試験会場に来る必要があった」とし、受験しやすい環境を整えた。

 また、甲南大は今回の22年度入試で、初めて豊岡市に会場を置いた。神戸キャンパスに加え、姫路、豊岡と兵庫県内3カ所を用意する細やかな対応について、担当者は「兵庫県北部の志願者が神戸で受験する場合、宿泊を伴う場合が多かった」と説明した。(伊藤大介)

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