JR西日本は21日までに、乗務時間の勘違いや宿直勤務で仮眠を取った際の寝過ごしといったミスが運行の遅れなどにつながった場合、その分を欠勤扱いとし、処分の対象にしてきた運用の見直しを決めた。3月から適用する。故意と認められるものは従来通りの扱いとする。
この運用を巡っては、50代男性運転士がJR岡山駅のホームで回送列車を待つ場所を間違え、発車が遅れた1分間分の賃金など56円が支払われないのは不当として、未払い分と慰謝料など計約220万円を求めて昨年3月に岡山地裁へ提訴し、今月21日に結審。JR西は同日、運転士側へ、未払い賃金分とその遅延損害金のみを支払う内容で和解を提案した。
JR西によると、これまでの運用で同様のケースは「労働時間として取り扱わない」とした上で、「処分およびマイナス評価の検討対象とする」としていた。同社は、運用の見直しは以前から検討していたとして、訴訟の影響を否定している。
JR西は尼崎市で2005年4月に乗客と運転士計107人が死亡した脱線事故後、乗務員管理の在り方を段階的に見直している。事故につながる事象を積極的に報告する態勢を進めるとしており、16年4月には、乗務員の人為的ミスを懲戒処分の対象外とする制度がスタートした。
訴状などによると、岡山地裁に提訴した運転士は20年6月、回送列車の車庫入れを指示された際、列車を待つホームを勘違いした影響で乗り継ぎの開始が約2分遅れ、列車のホーム出発は約1分遅れた。JR西は当初、乗り継ぎが遅れた2分間分の賃金85円を減額。労基署が是正勧告を出したが、同社はホーム出発が遅れた1分間分を減額した。
運転士側弁護士によれば、和解提案をしたJR西側に対し、謝罪や慰謝料を改めて求めるなどした。運転士は結審後、取材に「形の残る謝罪が必要。運用見直しは当然」と述べるにとどめた。和解が成立しなければ、今年4月にも判決が言い渡される見通し。
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