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隣接市町民が利用できる神戸市立中央図書館=神戸市中央区楠町7
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隣接市町民が利用できる神戸市立中央図書館=神戸市中央区楠町7
神戸市民への貸し出しを認めていない芦屋市立図書館の本館=芦屋市伊勢町
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神戸市民への貸し出しを認めていない芦屋市立図書館の本館=芦屋市伊勢町
神戸新聞NEXT
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図書館の相互利用で合意した当時の神戸新聞記事
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図書館の相互利用で合意した当時の神戸新聞記事

 神戸市と兵庫県芦屋市が1991年に合意したとされる図書館の相互利用を巡り、30年以上を経ても調整が難航している。当初から神戸は「首長同士で実施を確認した」と芦屋市民に本を貸し出してきたが、芦屋市は「議論開始に合意しただけ」と捉え、「市民利用に差し障る」として市内在勤・在学者以外の利用を認めていない。新型コロナウイルス禍でここ2年は協議も進まず、出口の見えない状態が続く。(初鹿野俊)

 相互利用の合意は、91年8月に神戸市内で開かれた「神戸隣接市・町長懇話会」にさかのぼる。

 神戸市や、神戸新聞の記事によると、同懇話会で、笹山幸俊神戸市長と、北村春江芦屋市長ら隣接6市2町の首長が意見交換。記事には、既に決まっていた阪神地域7市1町による図書館の利用開放を踏まえ、笹山市長が「同様のシステムづくりを提案、出席した市町長も賛成し」とある。

 神戸市は「各市町と相互利用に合意した」と受け止め同年12月、市立図書館で芦屋、西宮、宝塚、三田、明石、三木市と吉川町(当時)、稲美町の住民への貸し出しを始めた。

 しかし、芦屋市はこの「合意」に異議を唱える。

 同市は「実現に向けて協議することに賛成したにすぎない」と説明。「合意書などは残されておらず、内部文書に協議開始に同意した旨が記され、引き継がれている」とする。神戸市の芦屋市民への貸し出しにも「一方的に神戸市さんが始めた」と冷ややかだ。

 さらに、合意の有無に加え、芦屋市は隣の神戸市東灘区の存在を警戒する。

 同区内の市立東灘図書館の蔵書は約13万冊だが、芦屋市立図書館は約38万冊(2分室含む)。芦屋の図書館は専用駐車場がある上、貸し出し制限がなく(神戸は10冊)利便性は高い。

 一方、人口は東灘区民が約21万人と、芦屋市民約9万人の2倍以上。芦屋市は「開放すれば、充実した芦屋の図書館に東灘区民が大挙し、市民が借りられなくなる」と懸念する。

 両市の状況について、神戸市議らが「不公平」と指摘。それを受け、両市は7年前、「双方にメリットがある相互利用」を目指して協議を始めた。

 これまでに条件として、神戸が芦屋に移動図書館を出す▽東灘の蔵書を増やす▽東灘の一部地域の住民のみ受け入れる-などの案が浮上。しかし、事務的な負担との兼ね合いなどで結論は出ず、ここ2年近くは図書館がコロナ対応に追われ、協議も開かれていない。

 「不公平との指摘は理解できるし、開放したいが、現状では打撃の方が大きい」と芦屋市担当者。神戸市側も「いろいろとやりとりしてきたが、もう玉がない」と困惑している。

■宝塚市「心苦しいが、需要あるか疑問」

 神戸市と隣接市町との図書館相互利用では、芦屋市のほか宝塚市も市内在勤・在学者を除く神戸市民には開放していない=表。

 ただ、そもそも「合意していない」とする芦屋市に対し、宝塚市は合意自体は承知している。

 「心苦しいが、自治体規模のバランスを考えると、全ての神戸市民を利用の対象にするのは難しい」と宝塚市担当者。一方で、神戸からの利用者が予測できないことも理由といい、「宝塚まで本を借りに来る需要がどれだけあるのか…」と疑問を口にする。

 兵庫県内では、淡路島3市、姫路市など近隣8市8町、東・北播磨の8市3町なども相互利用に取り組む。

 神戸市と同じ政令市で、周辺7市と図書館の相互利用を進めている横浜市の担当者は「片方だけを受け入れる例は聞いたことがない」と驚く。(初鹿野俊)

【図書館プロデューサーとして全国の図書館運営に携わる総務省地域情報化アドバイザー岡本真さんの話】

 同じ都市圏内での公共図書館の相互利用は全国各地で例がある。図書館法も図書館同士が助け合うことを促している。昔と違って各自治体の図書館設置が進んだため意義はやや薄れてきたが、優れた政策だ。芦屋、宝塚市は、神戸市民にも門戸を開いた方が行政サービスをアピールでき、人口獲得を考えればPR効果も高いのではないか。

神戸阪神東灘まちのカダイ
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