兵庫県但馬地域で唯一の映画館「豊岡劇場」（豊岡市元町）が、８月末で休館することが決まった。約１００年の歴史で１０年前にいったん閉館し、住民の手で復活したが、新型コロナウイルス感染拡大による来館者の激減と、「巣ごもり」による動画配信サービスの普及で大きな打撃を受けた。

　同劇場は１９２７（昭和２）年開業。芝居小屋から社交ダンス場、映画館へと業態を変え、長年大衆文化の場として地元に愛されてきた。同市出身の俳優、故今井雅之さんも高校時代によく通っていた。経営悪化で２０１２年に閉じたが、１４年に不動産会社「石橋設計」を経営する石橋秀彦さん（５２）ら住民グループが復活させた。

　当初５千～６千人だった入場者数は１９年に約１万８千人と順調に増加。赤字から脱却する目前でコロナ禍に見舞われ、２０、２１年は約８千人と落ち込んだ。昨秋からは運営支援に向けて月１回のオンライン動画配信に乗り出すなどしたが、２年連続で１千万円近くの赤字となり、同社が負担し続けてきた。

　事業承継を模索しており、石橋さんは「まちの大切な文化拠点として、なんとか次世代に残したい」と話している。（石川　翠）