ボランティア団体のメンバーとして、宮城県南三陸町を拠点に東日本大震災の復興を支援した男性が、兵庫県西脇市で新たな団体を立ち上げて活動している。東北での経験から、避難先としてもう一つの生活拠点を確保しておくことの大切さを実感。新型コロナウイルス禍でも注目される「2拠点生活」の可能性を探ろうと、兵庫県立大大学院減災復興政策研究科で学び、実践できる民家も購入した。(堀内達成)
一般社団法人「まち・ヒト・未来創造研究所」代表の佐藤敬生さん(49)=西脇市。堺市出身で、2006年からボランティアに従事するNPO法人で働き始め、東日本大震災が発生した11年3月、南三陸町に入った。
被災した商店が震災1年後に開いた仮設商店街や、14年から始まった3万人が集まる復興マラソンなどの企画運営に参加。人材難で苦しむ地元企業と、被災地を応援する全国の若者をつなぐ役割も担った。
活動の中で、仮設住宅になかなか入れずに長期間、自治体が設けた避難所にとどまる被災者や、親戚や引っ越し先の住民とうまくいかずに転々と移動する家族の存在が気になった。いざというときに安心できる避難先を準備しておくことの重要性を痛感した。
南三陸町に来て8年がたった19年、仕事は充実していたが義父の介護のため、NPO法人を退職。妻の実家がある西脇市に引っ越し、貿易関係の本業の傍ら、経験を生かせる場として研究所を設立した。
翌20年に同大学院に入学し、研究テーマを2拠点生活に据えた。勉強を進め、人口減少で増える農村部の空き屋を避難先に活用する方法を具体化。さらに避難先の地域住民と被災前からコミュニケーションを取れていることが、被災後の生活立て直しに大切だ-とも分かった。
机上で考えたことを試行しようと、昨年11月、南海トラフ巨大地震の津波被害を受けないと想定される北播磨地域で中古の一戸建て住宅を購入。間取りは4LDKで、車で片道1時間程度の都市部に暮らす5家族を月2万円ほどで募集する予定だ。自身が管理人となって地域に根付き、集まった家族と住民のパイプ役を担うといい、今夏ごろのオープンを目指す。今後、物件を増やす計画もある。
「避難時だけではなく、週末に訪れるシェア別荘のように利用してもらえたら」と佐藤さん。この取り組みは佐藤さんを中心に地域で担うことで県から補助金を受けることにもなり「取り組みが軌道に乗り、モデルとして全国に広がれば」と意気込む。
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