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17人ものベトナム人が暮らしていた民家。首都圏や中国地方から来た不法残留者もいたという=2021年12月、兵庫県姫路市内
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17人ものベトナム人が暮らしていた民家。首都圏や中国地方から来た不法残留者もいたという=2021年12月、兵庫県姫路市内

 日本で暮らすベトナム人が増える中、同国出身者のコミュニティーがある兵庫県内では、不法残留者が違法な労働に関与させられる実態が浮き彫りになっている。背景には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う失業者の増加や労働現場の人手不足があるという。専門家は「労働力が集まりにくい仕事に使い勝手の良い不法残留者があてがわれている」と指摘する。(井沢泰斗、山本 晃)

■17人が暮らす家

 かつてベトナムからの難民を受け入れた「定住促進センター」が置かれた歴史から、多くのベトナム人が居住する同県姫路市。昨年5月中旬、市内にある古い2階建て木造民家に同県警の捜索が入った。

 この一軒家で暮らしていたのは、なんと17人ものベトナム人。留学生ら正規滞在者もいたが、うち10人は東京都や神奈川、広島、山口県など全国から集まってきた不法残留者たちだった。

 後に発覚する不法就労事件で取り調べられた彼らは、身の上をこう語ったという。「コロナ禍で仕事を失い、行くところがなかったので姫路に来た」「(渡航制限で)帰りたくても帰れなかった」

■コロナ禍で不法残留に

 姫路市の住民登録によると、2018年3月時点で市内に2898人だったベトナム人は、わずか3年で3843人(21年3月)と約千人増えた。兵庫県全体でも、1万6531人(18年6月)から2万3900人(21年6月)と約7千人増加している。

 ただし、これは正規滞在者の数字でしかない。コロナ禍以降に課題となっているのは、両国間の渡航制限や、失業などで滞在期限が切れた不法残留者の存在だ。県警の捜査員は「元々コミュニティーのある姫路や北関東などに集まり、一軒家などに集団で暮らす不法残留のベトナム人は一定数いる」と明かす。

■同胞による搾取

 この事件では、姫路に定住するベトナム人グループが、フェイスブックの掲示板で全国にいる同胞を集め、市内の一軒家やアパートに集団で住まわせていたことが判明した。

 県警によると、不法残留者たちは地元の解体業者に派遣され、県内各地の現場で解体作業に従事していた。日当1万2千円からマージンを抜かれ、実質9千円で働かされていた。グループは必要な許可を得ずに人材派遣業を営んでいたとされる。

 捜査幹部は「安い労働力を求める業者は多く、同じベトナム人でも定住者グループにとっては同胞を派遣するだけでもうかる商売だ」と話し、同様の事例は他にもあるとみている。

【外国人労働者の問題に詳しい神戸大大学院国際協力研究科・斉藤善久准教授】

 技能実習生が同胞から「もっと良い仕事がある」と誘われ、受け入れ先を飛び出してしまうケースは少なくない。在留期限の切れた不法残留者は帰るところがなく、ブローカーにとっては使い勝手の良い存在。肉体労働など、日本人がやりたがらない仕事にあてがわれているのが実態だ。コロナ禍以降、国も在留期間を更新できる制度を設けた。外国人労働者の派遣を受ける業者側も、間接的に不法就労を助長する可能性があると認識してほしい。

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