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バウムクーヘンや酢、パックご飯など酒米山田錦を加工した商品
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バウムクーヘンや酢、パックご飯など酒米山田錦を加工した商品
地元農家が丁寧に育て、収穫される酒米山田錦=2021年10月、三木市吉川町実楽
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地元農家が丁寧に育て、収穫される酒米山田錦=2021年10月、三木市吉川町実楽

 兵庫県が誇る酒米山田錦を日本酒以外に加工する動きが広がっている。長引く新型コロナウイルス禍の影響で飲食店の休業、時短が繰り返され、日本酒需要が低迷しているからだ。山田錦の消費を進めるため、酒米を使った酢や洋菓子、パンなどの新たな商品が誕生している。(篠原拓真)

 コロナ禍で日本酒消費は落ち込み、昨年の県産山田錦は前年から2~3割の減産を強いられた。このため新たな消費拡大を狙い、三木市の吉川町商工会は山田錦を100%使った純米酢「吉川」の開発を企画した。

 製造を担うのは日の出ホールディングス食品カンパニー但馬醸造所(養父市)。大友進所長(61)は一般の純米酢と比べ「臭みがなく香りがいい」と話す。

 酒造りで良質なこうじを生む山田錦の特性が、同じくこうじを使う酢の製造にも生きているようで、大友所長は「普段はこれほど良い米で酢を造ることはない」。豊かな土壌で農家が手間をかけて育てる高級酒米の質にうなずく。

 吉川町商工会は、完成した純米酢をテーマに飲食イベントを開催。町内の9店舗で山田錦の酢を使ったオリジナルメニューが誕生した。商工会の坪之内康宏課長は「米から酢、さらに酢をアレンジした商品へと物語を描けると思った。派生させることで消費につながれば」と期待する。

     ◇

 県立大環境人間学部は山田錦の活用を研究している。米の表面には雑味が出やすい脂質やタンパク質が含まれ、同学部の坂本薫教授は「米を磨く率が高いほど、タンパク質などが取り除かれ、雑味が少なくなる」とする。

 山田錦は一般的な米に比べて粒が大きく、精米で削る際に割れにくい。原材料にタンパク質が少ない方がケーキやクッキー作りに適しているとされ、小麦粉の代用として使いやすい。

 三木市内の農家は、大阪の洋菓子メーカーと協力し、山田錦100%のバウムクーヘンを考案した。小麦アレルギーの人でも抵抗なく食べられる。市内のパン店は山田錦の米粉で食パンを製造。「くどくなく食べやすい」と好評だ。

 山田錦の成分を分析した坂本教授は「結果から考えると、他の穀物と比べて消化しやすい可能性がある。加工した際の特性をさらに研究すれば、新たな商品開発につながるのではないか」と話す。

■清酒輸出額15年で5・7倍 欧米や中国との取引拡大 

 国内消費で苦戦が続く日本酒だが、輸出は年々増加傾向にある。2021年はコロナ禍から経済活動が徐々に回復し、欧米や中国との取引が拡大。日本酒造組合中央会(東京)は「需要は予想以上だった」とする。

 国税庁の輸出貿易統計によると、07年に約70億円(約1万1334キロリットル)だった清酒の輸出金額は、21年は約402億円(3万2053キロリットル)に上昇。07年からの15年間で金額は約5・7倍になった。

 特に20年と21年を比較すると、輸出金額は1・7倍増、数量も1・5倍増となり、同会は「営業再開した海外のレストランから注文が増加したり、日本酒を販売する海外サイトが増えたりしたことが主な要因では」と分析する。

 同会は海外戦略としてソムリエに注目。20年には仏ソムリエ協会と連携し、日本酒の認知度を高め、流行を広げることを狙った。

 日本酒造組合中央会の担当者は「ワイン業界を入り口に、日本食以外の場でも日本酒の存在場所をつくりたい。海外で日本酒が注目を浴び、国内人気の高まりにもつながれば」と期待する。

三木
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