新型コロナウイルスの感染「第6波」で、兵庫県内の診療所のうち4割以上で欠勤者が出たことが、県保険医協会(神戸市中央区)の調査で分かった。歯科を除く診療所の約6割が1日平均10人近い感染疑い患者を受け入れていたが、人手不足で診療を縮小せざるを得なかったケースも。感染者激増の影響が地域医療の担い手に重くのしかかっている実態が明らかになった。(井川朋宏)
県内の新規感染者数のピークは、1日当たり約6600人が確認された2月10日。その後は減少傾向となったが、今年だけで感染者は26万人を超えた。
同協会の調査は2月9~16日、開業医ら会員の診療所4455カ所に実施。735カ所から回答を得た。
今年に入り、新型コロナに関連してスタッフが欠勤した医療機関は311カ所(42%)あった。欠勤の理由を尋ねたところ、「本人が陽性」と答えたのは3割超。「その他」は6割以上で、家族が感染したり、濃厚接触者になったりしたケースとみられる。
欠勤者が出た影響(自由回答)としては「人手不足による患者の待ち時間増」「新規患者の受け入れ停止」「検査の中止」「併設のリハビリ施設の一時閉鎖」などが挙がった。
神戸市東灘区の口分田玄瑞診療所では、2月に1人が休んだ。家族に濃厚接触者がいたためで、家族も本人も陰性だったが、家族に発熱の症状が出たり、検査結果が出るまでに時間がかかったりして欠勤は約2週間に及んだ。診療所には患者向けの抗原検査キットがあったが、数が限られて使えなかったという。
医師2人のほか、看護師ら職員が4人。3回目のワクチン接種予約対応などに追われた時期で、医師の口分田真所長(65)は「1人が欠けるだけでてんやわんやになった。経営的に苦しいので人を増やす余裕はなかった」と話す。発熱したかかりつけ患者らも受け入れており、「医療従事者にかかるストレスは大きいのに、それに見合った公的な支援が足りない。余裕を持って医療を提供できるようさらに診療報酬を上げてほしい」と訴えた。
同協会の調査によれば、感染疑い患者に対応するのは歯科を除く591カ所中370カ所(63%)。受け入れ患者数は1日当たり平均9・3人に上った。
コロナ対応で困った事例(自由回答)では、「発熱患者とワクチン予約の電話に一日中追われた」「患者の陽性判明後、届け出などの事務作業がかなり多かった」といった声が寄せられた。多忙を理由に職員が退職し、残る職員がさらに疲弊する診療所もあった。
同協会は「かつてないほど休んだ職員が多く、日常診療に悪影響を及ぼした。平時から人、もの、資金など余力ある医療資源を整備できる体制が必要」としている。
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