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カウンター越しに常連客との会話が弾む石川博純さん(右)=年金食堂
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カウンター越しに常連客との会話が弾む石川博純さん(右)=年金食堂
【右】看板メニューのラーメン【左】「年金食堂」の目印となるのれん=いずれも年金食堂
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【右】看板メニューのラーメン【左】「年金食堂」の目印となるのれん=いずれも年金食堂
壁一面に収められた本に囲まれ、オープンを心待ちにする福井正敏さん=姫路市伊伝居
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壁一面に収められた本に囲まれ、オープンを心待ちにする福井正敏さん=姫路市伊伝居
【上】「猫婆軒」の看板【下】玄関に設けた「今月の本棚」。ロシアのウクライナ侵攻を受け、今月は「平和」をテーマにした=いずれも姫路市伊伝居
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【上】「猫婆軒」の看板【下】玄関に設けた「今月の本棚」。ロシアのウクライナ侵攻を受け、今月は「平和」をテーマにした=いずれも姫路市伊伝居

 「猫婆軒(ねこばばけん)」「年金食堂」-。世界文化遺産・国宝姫路城(兵庫県姫路市)の北にある姫路競馬場周辺を巡りながら、一風変わった看板を目にした。訪ねてみれば、出迎えてくれた運営者は、いずれもシニアの男性。ある共通の思いを抱き、看板を掲げていた。(段 貴則)

■中華料理店「年金食堂」 「値上げの春」に負けず

 姫路競馬場の西側、姫路市城北新町2に小さな中華料理店がある。目を引くような看板は掲げていないが、よく見ると「年金食堂」と記した紙が入り口などに貼ってある。

 「年金生活の高齢者の懐に優しい価格で提供し、いつも気軽に立ち寄ってもらえる店にしたい」。自らも年金で暮らす店主石川博純さん(71)が、店名に思いを込めた。

 メニューはいずれも価格を抑えた。看板商品のしょうゆラーメンは1杯500円。味付けも、高齢者が食べやすいように「さっぱり」を心掛けている。

 石川さんは30代で会社員から転じて料理人の道に。同県相生市に中華料理店を構えたほか、調理師学校の講師も長年勤めた。講師退職を機に、2020年10月、姫路に年金食堂を開いた。

 店はカウンター席のみ。年金世代の常連客らも増えたところにコロナ禍の影響が影を落とす。まん延防止等重点措置が解除されたが「高齢者はみんなコロナに気を付けていて、来店を控える人もいる。お客さんが戻り切るまで気長に待つよ」と話す。

 最近は、小麦や大豆といった原材料価格の高騰で、食料品など店に欠かせない商品の仕入価格も軒並み上昇。「値上げの春」はこたえるが「店でもうけようとは思わない。損が出ない間は頑張って店を開ける」と笑う。

 午前11時~午後2時、同5時~同9時。定休日は毎週月曜日。年金食堂TEL079・283・2160

■私設図書室「猫婆軒」 5千冊所蔵「どなたでも」

 桑原神社(姫路市伊伝居)の東隣にある民家の塀に、真新しい木製看板が掛けられている。「図書館」を意味するラテン語を冠して「ビブリオテーカ 猫婆軒」とある。私設図書室として10日にオープンするのを前に、運営する福井正敏さん(71)に案内してもらった。

 福井さんは姫路出身で、地元の信用金庫勤務などを経て、大阪で小学校の教師に。退職後の今も吹田市で暮らす。

 「本好き」となったのは父の影響。「子どもの頃、寝る前に父が昔話を語ってくれた。成長するに従って、自分でも本を読まないと眠れなくなった」と笑う。自宅には、主に学生時代以降に読んだ書籍を多く所蔵し、置き場所にも困るほどだった。

 一方、姫路市伊伝居の実家が空き家となっていたため「近所には高齢者も多い。祖父や両親が暮らした伊伝居に恩返しができれば」と、図書室の開設を思い立った。

 名称は、宮沢賢治の童話「注文の多い料理店」に登場するレストラン「山猫軒」をもじった。作中のせりふ「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」と同様に、利用者を迎え入れようと名付けた。

 実家1階の各部屋に天井まで届く本棚を設け、経済学や思想、歴史、文学など人文系を中心に並べた。「火の鳥」(手塚治虫)や「じゃりン子チエ」(はるき悦巳)などのマンガ本もそろえる。「きちんと数えていないが、全部で5千冊くらいはあるはず」という。

 持ち込んだコーヒーを飲みながら本を読むことも可能で、会合や講座にも利用できる。福井さんは「高齢者や若い住民が集い、私の本をみんなで共有できる場になるよう、地域に開かれた空間にしたい」と話す。

 入室や貸し出しは、いずれも無料。開室は原則、日・月曜日(午前10時~午後5時)。

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