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タオルや手製のボードなどを掲げてエールを送る阪神ファン=甲子園球場(撮影・吉澤敬太)
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タオルや手製のボードなどを掲げてエールを送る阪神ファン=甲子園球場(撮影・吉澤敬太)
阪神の攻撃。打席に立つ選手にファンの熱い視線が注がれる=甲子園球場(撮影・吉澤敬太)
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阪神の攻撃。打席に立つ選手にファンの熱い視線が注がれる=甲子園球場(撮影・吉澤敬太)
応援旗が振られ、盛り上がるライトスタンド=甲子園球場(撮影・飯室逸平)
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応援旗が振られ、盛り上がるライトスタンド=甲子園球場(撮影・飯室逸平)
甲子園球場へと観戦に向かう阪神ファンら。どれだけ負けが込んでも、現地での応援にこだわる虎党は多い=阪神甲子園駅前(撮影・井上太郎)
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甲子園球場へと観戦に向かう阪神ファンら。どれだけ負けが込んでも、現地での応援にこだわる虎党は多い=阪神甲子園駅前(撮影・井上太郎)
神戸新聞NEXT
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 「巨人ファンにとって、巨人は趣味の一部だが、阪神ファンにとって阪神は生活の一部」。巨人、阪神の両チームを知るプロ野球OBは、阪神ファンの熱の入れようをそう表現した。ということは、今季の虎党の生活は、間違いなく揺らいでいることになる。セ・リーグ記録となる開幕9連敗に始まり、最下位を独走。1980~90年代の「暗黒時代」は遠い昔、今季こそはと優勝を願っていたファンには信じがたい「逆スタートダッシュ」となった。開幕から1カ月がたった4月下旬、本拠地の甲子園球場(兵庫県西宮市)に足を運んだファンたちに、心の支えとなる「観戦哲学」を尋ねてみた。(大橋凜太郎、井上太郎)

■サトテルのアーチが唯一の希望

 阪神甲子園駅から球場へと続くファンの列。着込んでいるレプリカユニホームを見ると、8、8、8、8…。とにかく目立つ背番号の持ち主は、昨季、新人ながら24本塁打を放ち、今季も気をはく佐藤輝明選手(愛称・サトテル)だ。

 その一人、名古屋市から足を運んだ会社員、松島崇之さん(54)が気勢を上げる。「ヤクルトの村上(宗隆選手)、巨人の岡本(和真選手)との本塁打王争いに絶対勝つんや!」

 幼少期、「ホームランアーチスト」と呼ばれた田淵幸一さんの本塁打だけを楽しみに阪神戦を見ていた記憶が重なる。知ってか知らずか、野球にあまり興味のない妻までも、テレビ中継を見て「サトテルがホームラン打ったよ」と急いでLINEで知らせてくれる。

 開幕から1カ月ほどで、若武者のタイトル獲得にしか希望を見いださざるを得なくなった松島さん。それほどまでに、今季の阪神はチームが低迷している。

 開幕戦でプロ野球史上2度目となる7点差の逆転負け。その後も勝ち星に恵まれず、球団ワーストの開幕9連敗▽セ・リーグ最速の借金(負け越し)10▽17試合消化時点でプロ野球史上最低勝率(0割6分3厘)-など、負の記録を次々更新する。

 今季初めて連勝した際には、「破竹の2連勝」がツイッターのトレンドに浮上。懸命に前を向こうとするファンのいじらしさが話題になった。

■待ち焦がれるとびきりの「矢野ガッツ」

 勝てない阪神の要因として、多くの評論家らが挙げるのが、開幕前に矢野燿大監督が明らかにした今季限りでの退任意向だ。

 来季の指揮をとらない監督のもとで、果たして選手の士気は上がるのか-。異例の表明に対し、否定的な受け止めが目立つが、堺市から応援に来たパート田中眞貴さん(60)は、矢野監督への信奉を崩さない。

 選手時代から、熱狂的な矢野ファン。理由は「男前」という単純なものだが、「連敗を止めたとき、ほっとした様子の矢野さんの顔をテレビ中継で見て泣きそうになった」と打ち明ける。

 球場でよく席を取るのは、相手チーム側の3塁側スタンド。1塁側の阪神ベンチの様子がよく見えるためといい、グラウンドそっちのけで凝視し、矢野監督の表情に一喜一憂する。

■妄想、妄想、また妄想

 隣の芝は青く見える。

 他球団の主力選手が「阪神にいてくれたらなあ」と、かなうはずのない妄想で気を紛らわすのは、会社員の藤田貴士さん(46)=兵庫県多可町=だ。

 狙いを定めるのは昨季、オリックスをリーグ優勝に導いた投打の柱、山本由伸選手と吉田正尚選手らしい。だが、それだけではあまりにもむなしい。

 藤田さんは、阪神の藤浪晋太郎選手と佐藤輝明選手を、2人に匹敵する人材と見込む。「現地で応援することで、彼らを山本、吉田並みに育てていかなければいけない」と、選手育成の義務感に駆られる。

 同県尼崎市の派遣社員、喜多川佳美さん(42)は、江越大賀選手推し。「たとえグラウンドにいなくても」と、江越選手のレプリカユニホームを着てエールを送り続ける。

 江越選手といえば、高い身体能力と長打力を備えながら公式戦では三振が多く、ファンの間で「永遠のロマン砲」とささやかれる。かつて和田豊監督時代にレギュラーをつかみかけていた時期もあったが、近年は控えに甘んじている。

 「『4番江越』が実現すれば、得点力不足が解決する」と強調する喜多川さん。現時点で、その思いは妄想の域を出ないが、いつか持論が証明されると信じている。

■大記録の生き証人に

 昨季の阪神は、リーグ2位と優勝を逃したものの、上位に食い込んだ。特に負けが込んだわけでもなかったが、同県姫路市のパート従業員柴田綾さん(42)は、生観戦したおよそ10試合で阪神が全敗したという。

 「ランナーが進まないからチャンステーマすらほとんど聞いていない」と、試合内容も散々だったらしく、思い出も乏しい。唯一、印象に残っているのも、DeNAの牧秀悟選手に、新人初となるサイクル安打を見せつけられたことだ。

 懐が深いというか、もはや達観している柴田さん。「話のネタになるし、いっそ相手チームの記録でもええから、自慢できる名場面を見たい」。その心持ちならば、ロッテ佐々木朗希選手が今季達成した「完全試合」「13人連続奪三振」を超える記録を目の当たりにできるかもしれない。

■絶対に諦めない

 70勝ペースで優勝争いに絡めるとしたら、あと40敗ぐらいしても大丈夫-。

 そんな独自の論理を披露するのは、大阪府箕面市の会社員、原田史人さん(44)。悪夢の開幕戦を現地観戦しており、糸井嘉男選手の豪快な本塁打でリードを広げた四回裏に、早くも今季の優勝を確信したという。

 その後の悲劇は、周知の通り。だが、理論上はまだ優勝の芽が残っていることに目を付け、涼しい顔で話す。

 「ファンは、誰1人として諦めてないんじゃないですか」

     ◇     ◇

【今は忍耐、忍耐】

 最下位に低迷する阪神に対し、ファンはどのような心持ちで声援を送ればいいのだろう。阪神、ロッテなどで投手として活躍した小山正明さんに聞いた。(聞き手・小川 晶)

 -阪神は近年、上位が当たり前だった。それだけに、今季の低迷に対するファンの動揺は大きい。

 「ファンからすれば、阪神の選手がホームランをばかすか打って、ピンチをぴしゃっと抑えるのが理想なのだろう。ただ、野球というのは相手チームがいて、阪神の打線をいかに抑えるか、投手をいかに打ち崩すかを考えてくる。一つ勝つというのは、簡単そうに見えて、実は本当に難しいものなんだ」

 -負けが込んでいる状況に対して、評論家らからさまざまな指摘が出ている。

 「阪神は人気チームだから、報道される量がとにかく多い。さまざまな情報が流れるために、ファンは一喜一憂しがちだが、あおられたり、うのみにしてはだめ。期待をかけるのは結構だが、勝ち負けは勝ち負けとして受け止めて、もうちょっと掘り下げて応援してみてはどうか。例えば、特定の選手に個人的に注目して、長い目で見てあげるとか」

 「矢野監督の退任表明についても、いろいろ言われているが、負けが込んでいるから批判的に捉えられているだけ。プレーするのはあくまで選手であって、切り離して考えるべきだ」

 -阪神でプレーした選手として、ファンの存在をどう捉えているか。

 「よそのチームのファンの中には、状況によって別のチームを応援するなど、ひいきがコロコロ変わる人もいるが、阪神ファンは、常に阪神だけを応援してくれる。こんなにありがたいことはない。ただ、有望株が出てきたら飛びついて、調子を落としたら見向きもしなくなるというような傾向もあるように感じる」

 「私が(プロ野球歴代3位の)320勝を挙げられたのは、ひとえに『忍耐』があったから。阪神ファンも、今は忍耐。こんな低迷が、いつまでも続くことはないんだから」

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