「覚悟がなければ続けられない」。兵庫県内の全首長を対象にした交流サイト(SNS)の利用状況調査では、そんな声が多く聞かれた。匿名の誹謗中傷で精神的な負担は重く、途中で利用をやめるケースも。新型コロナウイルス禍では、首長が情報を素早く発信するツールとして注目されたが、失言などが瞬時に拡散して「炎上」する事例もあり、もろ刃の剣の扱いに頭を悩ませている。
■突然の「閉鎖」宣言
「もう限界です」。4月27日夜、神戸市の久元喜造市長は自身のツイッターで突然つぶやき、9年近くの愛用歴に終止符を打った。
直近のフォロワー数は約2万9千人。神戸新聞社の取材に「内容によってはインプレッション(投稿が表示された回数)が100万件を超え、情報発信で相当効果がある」と手応えを語っていた。一方で、ツイートへのコメントには「事実無根の内容や捏造もあり、精神衛生上よくない」とも。取材の2日後、アカウントの閉鎖を宣言した。
ツイッターは利用者の多くが愛称などでアカウントを作り、匿名性が高い。事実と違う情報の発信もあり、中傷を繰り返し受けたプロレスラー木村花さんの自殺などが社会問題化し、規制強化が検討されている。
■利用の店舗にまで…
ツイッターを活用する斎藤元彦知事も「フォロワー数から見ると、きついコメントはごく一部だが、それが全体のように見えてしまうことがある」と悩みを明かす。3月にはコロナに感染したことをやゆするような内容も書き込まれた。
ただ「応援のコメントも多く、(中傷などは)気にしすぎないようにしている」と斎藤知事。「自分の考えや県政情報を直接伝えられるメリットは大きい」として、今後も投稿を続けるという。
同じ悩みから2020年春にツイッターをやめた加古川市の岡田康裕市長。自身が使ったテイクアウトの店舗についてまで批判が寄せられたといい、同時に利用していたフェイスブックに「エネルギーの使いどころとしてマイナスの方が大きい」と停止の理由をつづった。
岡田市長は「幅広い世代に普及するツイッターの発信力は大きい」と認めつつ、「精神面の健康との兼ね合いが難しい。取り扱いはそれなりの覚悟がいる」と語る。
■「発信力」が裏目
発信力の強さが裏目に出る事例もある。県内首長で最大のフォロワー数を誇る明石市の泉房穂市長は2月、川崎重工業への法人市民税課税額が載った画像を投稿。批判が集中し10日ほど後に削除したが、市議会が地方税法の守秘義務違反に当たる可能性があるとして、調査特別委員会(百条委員会)を設置する事態に発展した。
「(課税額の)投稿は不適切で反省している。いったん世に出ると、削除しても広がってしまう」と泉市長。一方、市民の声に直接耳を傾け、国や県に提言できる意義も実感しており「脇を締めて慎重な運用を続けていきたい」とする。
(まとめ・金 旻革)
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