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47人の戦争体験を写真入りでまとめた「いのちの足音」。編集メンバーが歴史的な検証も加えた=神戸市中央区雲井通4
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47人の戦争体験を写真入りでまとめた「いのちの足音」。編集メンバーが歴史的な検証も加えた=神戸市中央区雲井通4

 今年で終戦から77年となり、戦渦に巻き込まれた一般市民の息づかいが消えつつある。戦争を知る世代は年齢を重ね、自宅を離れて施設で暮らす人も増加。そんな背景を受け、兵庫県内で高齢者福祉施設を運営する社会福祉法人が、入所者ら47人の戦争体験を書籍「いのちの足音」にまとめた。編集に至った理由は明快だ。「体験者の思いを感じ取り、記録することができるのは、そばで接する私たちしかいない」(小川 晶)

 戦争を経験した入所者に、戦争を知らない職員が向き合うためには、体験や思いを理解しなければならない-。「いのちの足音」の発刊は、社会福祉法人「きらくえん」(神戸市中央区)の名誉理事長市川禮子さん(84)の考えがきっかけだった。

 教職員OBらでつくる「兵庫歴史教育者協議会」に相談し、上野祐一良さん(84)=神戸市北区▽大木久さん(71)=西宮市▽山内英正さん(73)=芦屋市-の3人が参加。2018年2月から、趣旨に賛同した入所者らの聞き取りを始めた。

 対象者は皆80代以上で、体調に配慮しながら、一言一言に耳を傾けた。特に苦労したのが、証言の裏付け作業。文献を当たったり、現地を訪れたりして確認し、書籍化に当たっては注釈として付記した。

     ◇

 「僕の心の終戦は未(いま)だに終わっていない」

 体験記の冒頭でそう表現する1927(昭和2)年生まれの男性は、中国・奉天で終戦を迎えた。旧ソ連軍によるシベリア移送の途中で逃げ出し、46年からの「国共内戦」に従軍した。

 支給品が乏しく、「自給自盗」しながら戦地を回ったこと、敵を捜し、追い掛ける「将棋の駒」のような扱いを受けたこと。生々しい証言の最後は、自作の短歌で締めくくられている。「死ぬほどに 日本恋せし おぼえあり 拉われしよな 中国抑留にて」

 日本国内で戦争を体験した人の声も多い。

 26(大正15)年生まれの女性は、召集令状を配った記憶を明かしている。ある日の夕方、面識のある母1人、息子1人の家庭を訪ねた。母に赤紙を手渡すと、その場に崩れ落ちた。

 阪神電鉄に勤務していた同い年の女性は、空襲によって車庫が燃え、泣きながら逃げ回った。友人の弟が機銃掃射で亡くなったが、「悲しみは少しも起こらず、ただ、白いおにぎりが食べたかった」と振り返る。

     ◇

 毎年終戦の日が近づくと、目の前で戦友が殺された恐怖がよみがえり、叫び出す男性。手違いで戦死扱いとなった別の男性は、妻が弟と再婚していたため、故郷を捨てて独身のまま生涯を過ごした。

 市川さんによると、きらくえんが最初の施設を開いた80年代は、戦争で負った心の傷を抱えて生きる入所者が多かったという。だが、現在では明確な記憶がある人は80代以上に限られ、年々減っていく。

 市川さんが願う。「過酷な戦争の実態を当事者から聴く時間は限られている。既に遅きに失したという思いもあるが、この本が、世代間の断絶を埋める手助けになってくれれば」

 「いのちの足音」は171ページ。2千部限定で発刊し、希望者に税込み1500円で販売している。きらくえんTEL078・242・7575

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