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新基準が適用されず、補償制度の対象外となった女性(右)と長男(左手前)=兵庫県内
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新基準が適用されず、補償制度の対象外となった女性(右)と長男(左手前)=兵庫県内
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駅利用者らに署名を呼び掛ける親子=JR姫路駅前
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駅利用者らに署名を呼び掛ける親子=JR姫路駅前

 出産時の医療事故によって重い脳性まひとなった赤ちゃんと家族に補償金3千万円が支払われる「産科医療補償制度」が今年1月、改定された。基準の大幅緩和で対象者が増えた一方、旧基準で対象にならなかった家族は新制度でも除外されたまま。介助などの経済的負担は重く、救済を求める声が上がる。

 4月末、JR姫路駅前で「産科医療補償制度を考える親の会」のメンバーら約10人が、救済を求める署名運動を行った。当事者の親子も「制度から取り残された人がいることを知ってほしい」と参加した。

 制度は2009年に国が創設した。医療機関で何らかのトラブルが起こり、生まれてくる子が重い脳性まひになった場合、一時金と毎年の給付金を合わせ、3千万円が支払われる。妊婦があらかじめ掛け金を払う。

 旧基準は原則、妊娠32週以上で生まれ、体重が1400グラムを超える赤ちゃんが対象。28~31週でも個別審査で幾つかの要件が認められれば、対象とされた。しかし最近の調査で、個別審査で対象外と判定された場合でも、その99%が「出産医療に伴う脳性まひ」として制度の対象になり得ていたことが分かった。全国で約500人に上るという。

 これを受け、国は制度を改定。28週以上なら先天性のケースを除いてすべて補償対象としたが、あくまで今年1月以降に生まれたケース。それ以前だと認められない。

 「なんで対象外なんやろうって思いがずっと消えない」。兵庫県の会社員女性(39)も制度から漏れた一人。長男(4)には脳性まひがあるが、当時の個別審査で基準に達しなかった。今なら28週以上という新基準は満たしており、補償金が支給されたかもしれない。

 女性は「補償金があれば高額な医療を受けられた。車いすが通れる家にもリフォームできる」。家のローンがあるため仕事を続ける予定だが、将来は見通せない。制度から漏れ、脳性まひの要因がはっきりしないままというもどかしさも抱える。

 兵庫県姫路市の女性も小学5年の長男(10)に脳性まひがある。当時の個別審査で対象外となり、子のリハビリのために仕事はやめざるを得なかった。成長した長男を車に乗せるのも一苦労だが、福祉車両は高額で手が出せない。「子のために何でもしたいけど、経済的なストレスが常にある」

 県外の病院への交通費を抑えるため、近くにバリアフリーの中古物件を購入。通常の新築物件ほどの金額がかかった。女性は「補償で最新の治療を受けられたら息子がこれ以上つらい手術をしなくて済むのではと思うと、心が痛い」とこぼした。

 ほかにも、ひとり親で子どもが3人おり、対象児が自宅で全介助が必要な例も。常勤の仕事ができないので、パートを掛け持ちして教育費を捻出するしかないという。

 旧基準で実際に支払われた補償金は当初の見込みより大幅に少なく、制度の剰余金は600億円以上に達する。医療訴訟に詳しい堀康司弁護士=愛知県弁護士会=は「旧基準については専門家の検討会で『医学的な合理性がなかった』という指摘があり、不合理な区分を続けてきたことは明らか」。さらに「基準見直しだけでなく、剰余金を活用し、過去対象になり得た人たちへの補償についても検討すべきだ」と主張する。

 一方、制度を運営する公益財団法人「日本医療機能評価機構」は「旧基準は当時の医療水準として間違っていたわけではない。大変な環境に置かれていることは分かるが、制度上、対象外が出るのは理解してほしい」と説明。過去にさかのぼっての適用は難しいとの立場だ。ただ4月の国会で後藤茂之厚生労働相が「遡及して変更する是非を検討する必要がある」と答弁しており、今後の動きが注目される。(小谷千穂)

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