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<未来を変える 脱炭素への挑戦>海の「森」育てて温暖化防げ 神戸の児童らアマモ保全活動  

2022/05/02 05:30

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の吸収源として、浅水域の海草や海藻などを活用する「ブルーカーボン」の取り組みが、新たな気候変動対策として注目されている。藻類などを増やすことで、森林のようなCO2の削減効果が期待されるからだ。

 「(海草の)アマモはなんで大切なんだっけ?」「魚のすみかになるし、CO2も吸収してくれるから!」。4月中旬、神戸市兵庫区の兵庫運河で、浜山小学校の5年生が講師の問い掛けに答えていた。この日は、20~30センチほどのアマモの苗を運河に植えた。アマモの役割を学び、半年かけて自分たちで種から育てたものだ。

 協力したのは、地元の兵庫漁業協同組合の漁師ら。10年以上前から地域を挙げて兵庫運河の環境改善に取り組み、近年は国や市が人工干潟を整備した。一帯の海中にはアマモの群生が広がり、同漁協の井上隆司さん(45)は「8年前に少し植えたものが、これほど広がっていたとは」と驚く。

 今、同漁協や同小などが取り組む藻場の保全活動は、地球温暖化対策として神戸市や国も支援する。ブルーカーボンは海草などが光合成の働きで吸収する炭素をいい、2009年、国連環境計画の報告書で命名された。森林による「グリーンカーボン」とともに、政府は脱炭素社会実現に向けた「グリーン成長戦略」に推進方針を明記する。

 市内では近年、神戸空港島の護岸でワカメやシダモクなどの藻場が確認された。植物が育ちやすいよう緩やかな傾斜になっていたためで、21年度、市は同様の造りになっているポートアイランド2期周辺も併せて本格調査に着手した。

 市は淡水域での実証実験にも全国で初めて乗り出した。同市兵庫区の烏原貯水池では4年前から、水道水のカビ臭対策として水草のササバモを植えている。市は大学教授らとCO2の吸収効果などを調べ、別のため池への移植も計画する。

 活動には学生ボランティアらも協力している。市の担当者は「CO2吸収量いかんにかかわらず、市民や若者の環境保全への意識づけにしたい」と期待する。

 そして、こうした活動を持続可能にする仕組みが「カーボンオフセット」だ。兵庫県内の山間部では、この制度を活用して森林を保全する取り組みが本格化していた。(初鹿野俊、石沢菜々子)

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